マンボー

社長漫遊記のマンボーのレビュー・感想・評価

社長漫遊記(1963年製作の映画)
3.6
当時はかなり流行ったであろうこの手の昭和中期の会社を舞台にした喜劇は、これまでとんと縁がなく、ほぼ初めての観賞だった。またどうしても当時の流行なんかが分からず、悲しいかな、ピンと来ない点もあって残念だった。

あと、どうもストーリーの展開がゆったりしていて、現代の喜劇に見慣れた目からすると、メリハリと刺激に欠けるし、風俗も野暮で、かつてはカッコよかったはずのところが、今ではむしろ最悪にカッコ悪く感じられるなど、過去と現代の価値の残酷なほどの変化に一抹の虚しさを感じたし、流行モノだけに時代の波を乗り越えるのが難しかった映画だと思う。

などと、好きなことを勝手気ままにあげてみたが、キャラクター一人ひとりの個性の強さは現代以上で、演者の素にプロの達者さが見て取れ、何とも立ち居振る舞いが軽妙洒脱に見えて、個々の存在感が実にステキ。喜劇役者としての純粋な腕力では、現代の喜劇役者はとうてい太刀打ちできないのではあるまいか。
またそう考えると、現代の喜劇は、個よりもドラマ重視。ストーリーで観せている傾向が露わにもなる。

それはともかく、当時のいわゆる役者のせめぎ合いが作品の価値に昇華されていたスクリーンの愉しさは、どうやらいつの間にやら少しづつ失われてきた感も強い。

役者たちの強い個性が全てを引っ張り、脚本家は役者の個性に合わせてストーリーを考える。そんな作品やシリーズが舞台の世界だけでなく、邦画の世界でもまた新しく誕生すれば、これからの映画の裾野も広がるのではないかと思いますが、これいかに。