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イノセンスのbackpackerのレビュー・感想・評価

イノセンス(2004年製作の映画)
4.0
「一烈談判破裂して〜♪」

『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』の続編。
広大なネットの世界に自己を同一化し、公安9課から草薙素子……通称"少佐"が姿を消してから3年。
素子を失った喪失感から塞ぎ込むバトーと、新たに公安9課のリーダーとなったトグサに、少女型ガイノイドによる連続殺人事件調査の指示が舞い込むが……。


前作にて「自分の存在を疑問視する」という大変難解なテーマを、練り込んだ世界観・緻密な描画・時に難解な台詞回しで荒れ狂う暴風雨のように叩きつけ、それでいて微風と清流のようにサラリと流して作品自体は終わらせていました(ただしいずれも言葉少なではあります)。
今回は、画力で更に重みを増し、加えて大量の引用を台詞の元ネタとしてくる仕様に極振り。益々難解な、それでいて魅力的作品となりました。

「自己の存在への疑問に立脚する喪失」の果てにいなくなった素子と、同じ道を辿りかねない危うさを漂わせるバトー。
彼を心配する荒牧課長他、9課の面々。
そして、物理的にも精神的にも、最も人間らしさを残すトグサとのコンビの行方。
彼らの主義主張から抱く疑念まで、多くの言葉の引用により紐解く……というよりこんがらがらせていくうえで、一応"鏡"というキーワードを楔として展開されます。
特に、人形(機械)と人間の関係性・立ち位置に対するバトーの流浪っぷりに対しては、クライマックスの最後にて、バトーが助け出した少女に対し思わず怒鳴りつけた台詞から、「彼が人間寄りのものの見方をしていない=立ち位置が一段とハッキリした」ということがよくわかる、印象的なシーンとなりました。

以上のようなことから、前作よりも複雑さを増しているようには思うものの、前作同様なんとなく一貫性を持って受け入れられる本作。
やっぱりよくわからない(頭良くない自分のせいですが)ことには変わりありませんが、それでも、なんとなく心に引っかかる、また見たいなと思わせてくれる、そんな魅力ある続編ではないかと思います。
前作をご覧になった方は、是非続けてご鑑賞ください。
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