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魔界からの招待状のhorahukiのレビュー・感想・評価

魔界からの招待状(1972年製作の映画)
4.0
悔悟の念なく死んだ者の行く先だ!

12月はクリスマス⑦

英ハマーと双璧アミカスプロによる漫画原作のホラーオムニバス。地下墓地に迷い込んだ5人の男女の暗い過去が、『世にも…』のタモさん的ストーリーテラーによって炙り出される古風な雰囲気が堪らない。同じくアミカスの傑作オムニバス『テラー博士の恐怖』に続き監督フレディフランシス×脚本ミルトンサボツキーの黄金コンビで面白くないわけがないという安心感。

1話目『AND ALL THROUGH THE HOUSE』
「世界一の妻へ」とメッセージを添えたクリスマスプレゼントを準備してウキウキしてた夫に対して、「死」という最凶のクリスマスプレゼントをあげた奥様。夫の保険金目当てのようで、2階でサンタを楽しみにしてる子どもにバレないよう、死体処理に勤しんでるところに精神病院から抜け出した殺人鬼サンタがやってくる…。

これがクリスマスホラー。サンタが殺人鬼の映画って80年代以降のイメージだったのだけど、72年の本作で既に描かれていたのが驚いた。2階で寝てる幼い子どもという絶対にバレてはいけない爆弾を抱えた中で死体処理をしつつ、窓を破り押し入ってこようとする殺人鬼サンタに対処する絶望的なマルチタスク。出る杭を叩くように襲い掛かる問題をひとつずつ潰していきつつも、抑えきれずにコントロールの外に溢れ出していき、自分が作り出した「幻想」によって爆弾と爆弾が結びついていく過程が面白い。


2話目『REFLECTION OF DEATH』
「仕事で今から出張なんだ…すまない…」と妻子に謝り、速攻で浮気相手の部屋に直行するクズ夫。そのまま二人で逃避行…の予定が、車が事故って転落。目覚めると浮気相手がいない。助けを求めて街行く人々に声をかけるもみんな悲鳴を上げて逃げていく。何が起こってるのか…。

途中のPOV視点が面白い。事故直前に起点を置くことで、果てしのない無限地獄の道中をチラ見させられただけなのだという感覚が絶望感を増す。そもそもクズだから自業自得だけど。


3話目『POETIC JUSTICE』
妻に先立たれたジジイは、近所の子どもたちや沢山の犬たちと毎日楽しく暮らしていた。でもそれを気に食わない金持ち隣人がジジイを孤立させ、出て行かせようと画策。その日を境に、ジジイから少しずつ人々が離れていき…。

妻を愛するあまり、妻との思い出が詰まった家を手放すことができず、細々と勤勉に暮らしてたジジイに金持ち道楽野郎が超個人的な恨みをぶつける胸糞短編。地味にバレンタインホラー。ハート形のチョコとかあるけど、ジジイが最高の「ハート」の贈り物を置いていく洒落の利いた短編。


4話目『WISH YOU WERE HERE』
事業に失敗し破産をするか、夫婦の思い出が沢山詰まった自宅を手放すかの二択を迫られた資産家夫妻。妻が香港で買ったとある美術品のことを思い出す。それには「3つだけ願い事が叶う」と書かれていた。半信半疑ながら、早速大金が欲しいと願うが…。

本編でも言及されるけれど、『猿の手』的なお話。1つ目の願いで大金が手に入るのだけど、それは夫の死亡保険金。そして『猿の手』を逆手に取り、予想されるマイナス要素を避けられるような願いを考えるという願望器とのトンチ合戦。その末に訪れる無限地獄がえげつなさ過ぎて笑った。


5話目『BLIND ALLEYS』
「盲人の家」という施設の院長に就任した男がクソ野郎。自分の部屋には高価な絵画を飾り、食事はステーキとワイン。その一方で盲人たちの食費は削りゴミのようなご飯えを食べさせ、寒さを訴える人々を無視し、暖房はつけず毛布も配らない。そのせいでついに死者が出る…。起こった人々は院長に驚くべき方法で復讐にでる。

まさに静かな怒りとでもいうように日常音や動作音に怒りを乗っける演出が冴えている。院長と支配-被支配が逆転して華夏も単純な作業音と規則正しい犬の鳴き声が考えも及ばない何かが進行しているという不安を煽る。

全部面白いという素晴らしいオムニバスホラーでした。この5人が導かれるように迷い込んだ場所は何なのかということにもしっかりとオチがつき、弾圧された宗教と殉教者から逸れるという設定部分にもわかりやすく意味をつけてるし、最終的に矛先をこちらに向けてくるのも古き良きホラーショーな感じでたまらなく良かった。
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