シズヲ

三人の名付親のシズヲのレビュー・感想・評価

三人の名付親(1948年製作の映画)
3.4
「赤ん坊を託された三人の悪党が育児しながら旅する」と書くとほのぼの西部劇っぽい雰囲気があるが実際は延々と砂漠を渡るので普通に過酷だし、モチーフ的にもめちゃくちゃ宗教的。アウトロー達が道徳心に目覚めて贖罪の旅路を往く物語なんだよな。悪党トリオの役割はいかにも東方の三博士を暗示していて、聖書なんかも重要なアイテムとして機能しまくる。

とはいえ本筋に入る前の序盤が微妙に長くてちょっとダレる(保安官との因縁の布石を張っていたり、疾走感ある乗馬アクションを披露していたりと展開自体は決して悪くはないけど)。かといってそこで「後に悪党トリオが信仰に目覚めて赤ん坊を命がけで助ける」だけの説得力を効果的に描いている訳でもないので、中盤以降の流れも唐突な改心に見えてあまりピンと来ない。宗教要素の描き方も少々露骨すぎるし、ラストの展開も良い方向に転がしすぎて却って余韻を蹴り飛ばしている印象。

想像していた面白さとは若干ズレていた感は否めないものの、要所要所で良い場面が見受けられるのは憎めない。赤ん坊を託された直後に三人で育児に悪戦苦闘する姿は何だかんだでほっこりするし、信仰に目覚めた男達の友情や行く末には少なからずしんみりしてしまうから悔しい。珍しく悪党やってるデュークも良い味を出していて、満身創痍になりながら赤ん坊を抱えて我武者羅に歩き続ける姿は普段の彼とのギャップも相俟ってグッと来る。三人の旅路の途中で容赦ない砂嵐が吹き荒れる場面など、自然と役者を効果的に捉えたフォードらしいカットも相変わらす秀逸。
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