茜

ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日の茜のレビュー・感想・評価

4.6
圧倒的な映像美を楽しむも良し、動物好きの人なら可愛く愉快な数々の動物達を楽しむのも良し。
少年の成長というヒューマンドラマあり、臨場感溢れるアドベンチャー要素あり。
それら全てが迫力満点の美しい映像と共に展開されるのだから、
難しい事を考えず単純に目の前の景色そのものを楽しむだけでも充分面白い映画だと思える。

ストーリーの中枢には「信仰」というテーマがあるらしいけれど、
私のように何も信仰心を持たずに生きている人間には全く馴染み深くない言葉だと思うので、
話のより深層部分を考えようとしても正直全くピンと来ない。
でも私としては一人の少年の壮絶過ぎる成長物語として観るだけでも充分満足したし、
「人生とは手放すこと」というこの一言が的確に全てを象徴しているような気がする。
物語をどのように解釈するかは人それぞれだけど、一人の少年の辛すぎる成長過程を、
ここまで壮大なスケールで美しく表現するという儚さがとても良かった。
確かに人間の持つ「若さ」と、野生動物の持つ荒々しい鋭さって共通しているような気がする。

しかし虎をはじめとした動物の質感がとてもリアルで、映画館で観たら最高に感動しただろうなぁ。
終盤で骨が浮いて痩せこけた虎から漂う哀愁がやけに生々しくて好きだった。
FOX2000の閉鎖がしみじみと悲しくなる映画でした…。
茜