茜

クロニクルの茜のレビュー・感想・評価

クロニクル(2012年製作の映画)
4.0
正直ジャケ写とタイトルから少し安っぽさを感じていたのですが、とんだ勘違い。
映像の魅せ方やほろ苦いストーリーが期待以上に良くて、夢中で画面を追いかけてしまった。
SFならではのかっこよさと、繊細な少年達の楽しいけど悲しすぎる青春物語の絡みが最高。

POVの映画は今まで何となく苦手なものが多かったけれど、この映画ではPOVが非常によく生きてました。
雲の上を飛び回るシーンなんて本当に気持ちよさそうだったし、カメラを持った人物が飛ぶのに失敗して転ぶ所もリアル。
それに加えて所々に監視カメラの映像も織り交ぜる事で、まるで実際に起きた事ではないのかと思わせる臨場感が凄い。

そんなはっちゃけSF要素と反して、ストーリーは悲しくて切ない。
特にアンドリューが破滅を辿る過程は、彼のバックグラウンドを思うと悲しく感じてしまう。
父親はアル中で母親は病気の貧しい家庭、気弱で内向的なのでいじめっ子からはすぐ殴られるしバカにされる。
そんな少年が未知の力を手に入れる事で、自分を「頂点捕食者」だと勘違いして暴走してしまうという展開はあるあるですよね。
アンドリューが蜘蛛を空中分解するシーンが個人的に一番お気に入りなのですが、あのシーンこそアンドリューの闇落ちを上手く表現していると思います。
陰キャのアンドリューと、陽キャのマット、優等生のスティーヴという異なる人物像を持つ3人の間に芽生える友情は素晴らしかったけど、同時に脆さや危うさも感じさせる。
前半でとても楽しそうに友情を育んでいく3人だけど、後半では徐々に友情が崩壊していく。
その落差が凄まじくて、敏感な年頃の少年達だからこそ起きてしまったすれ違いが切ない。

巧みな撮り方で魅せるSF要素に興奮しつつ、じんわりと心が切なくなる良作。
茜