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呪われた者たちのhorahukiのレビュー・感想・評価

呪われた者たち(1963年製作の映画)
4.1
死人のように体温が冷たい子どもたち。
生まれた時から地下に幽閉されている彼らと、彼らを偶然見つけてしまった大人たちが、隠された世界の真相へと迫っていくSFホラー。

カナザワ映画祭in神戸映画資料館。
『未知空間の恐怖』を思い起こさせる子どもホラーですが、本作の子どもは怖くないです。ある意味怖いけど…。ちなみにカナザワ映画祭では『ザ・ダムド』のタイトルで上映してました。

あらすじ…
アメリカから旅行に来てた主人公は、イギリスの田舎町でハニートラップに引っかかり、オヤジ狩りに遭ってボコボコにされる。その後、船をイジっていると、その時の女が近づいて来た。女が「あれは嫌々だったの」と言うとコロっと信用するオヤジ。その女と一緒にオヤジ狩り軍団から逃げる途中、崖から落ちた2人は子どもたちに助けられる。その子どもたちは軍事施設の地下に幽閉されており、体温が極端に低かった。彼らはいったい…。

『未知空間の恐怖』の子ども怖くないバージョンみたいな感じでした。あちらは共産主義の台頭による異なる文化や価値観が自分たちに取って代わってしまうことの恐怖を描いていましたが、本作は方向性が違うものの、やはり自分たちとは違う存在が人類に取って代わることを描いている。しかし、本作では取って代わられることそのものを恐怖として描いているわけではなく、そういった状況に追いやった現人類を恐怖の対象として自戒的に描いているのが面白いところ。

『未知空間の恐怖』と同様に、本作の子どもたちも現人類にとっては脅威でしかない。ただ、明確に侵略の意図があった『未知…』とは違い、本作の場合には何も知らない無邪気な子どもとして描かれていて、大人に危害を加えるわけでも人類を破滅させようとするわけでもなく、とても友好的。というより本当に普通の子ども。彼らの行動ではなく存在そのものが人類にとっての脅威であり、彼らが生まれてしまう環境を作ってしまった人類の取り返しのつかない過去の行いへの罰。

そして本作は、これから生まれてくる子どもたちにこんな世界を残し去っていくことの懺悔でもある。理性と感情。観客をその分岐点に立たせ、反面教師的に理性の暴力が許されてしまう世界にするな!という未来への警鐘を鳴らす素晴らしいSFでした。

親子ほど年が離れてるヒロインに即キスを迫るというキモいおっさん主人公に寒気と生理的嫌悪を感じつつ、誰得なこの2人のラブストーリーと、2人を追うオヤジ狩り集団と、やたらと強気な彫刻家の女性と軍事施設のお偉いさんのお話が終盤に向かって交差していくのですが、子どもたちが絡む本筋に割く時間と比べてそちらのパートが異常に長く、物語構成の歪さがかなり気になるのが残念。前半とかマジでオヤジ狩りから逃げるだけですからね(^^;;

とはいえ、彫刻家も国家権力というか理性に立ち向かうものとして描かれているわけなので、やりたいことはわかるんですけどね(^^;; でも、そんなこと気にならないくらいの傑作でした!もっと有名になるべき作品!
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