マサキシンペイ

共喰いのマサキシンペイのレビュー・感想・評価

共喰い(2013年製作の映画)
2.6
田中慎弥の芥川賞を受賞した短編小説が原作の映画。
性行為の際に女を殴る悪癖を持つ父と、その癖を嫌悪しながらも抗えない血の衝動に怯える息子の物語。

男が女を殴り、女に痣が出来ていく様が、ほとんど即物的に描かれている。役者達の感情的な演技が静かに光っているのにも関わらず、避妊せずに射精すれば妊娠し、顔を殴れば痣が出来る、というような客観的な事実のみが前に出る。男はただ殴り、女はただ殴られる。壮絶なストーリーでありながら、まるで痛々しく見えない。あたかもただ物理現象の様だ。

映画全体が感傷的な空気を伴わず淡々としており、明確な恐怖や痛みではなく、日本の夏の気候のように、ジメジメとした印象として暴力が映る。残酷な程に抑制的な演出がなされている。

映画的な技巧をつぶさに感じるが、それを娯楽品へと押し上げるような脚色が一切排除されていて、映画的快感はない作品。
マサキシンペイ

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