ぼのご

スプリング・ブレイカーズのぼのごのネタバレレビュー・内容・結末

スプリング・ブレイカーズ(2012年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

息苦しい日常から逃れるため、春休みを使って旅行に出かける仲良し四人組。スプリング・ブレイクの様子は度を越した現実逃避で、日常をぶっ壊している感じが清々した。下品なんだけど日常でも下品な人なんて沢山いるし、まともぶった地味に下品な人よりも社会不適合なほど振り切っている方がまだ好感持てる。強制的な雰囲気が少しでもあったら嫌になるけど、誰も強制はしていない点がまた良かった。

旅行資金を用意するために強盗を働くフェイスを除いた三人。強盗の様子を再現して見せる三人が結構怖くて、引いちゃってるフェイスにすっごい感情移入した。
ブレイク先で麻薬取締か何かで連行され、保釈金を見知らぬギャングの男に払って貰って、釈放された後はギャングの集まりに移動する。ここでフェイスだけが「これが目的じゃない」って離脱するのはそれまでのフェイスの様子からしても自然だった。日常から逃れたいって気持ちを持つのも自由だし、逃げ場を選ぶのも自由だと思う。一応みんな引き留めはするけど、友達もギャングの人も無理矢理には引き留めなくて、ここでも強制感が全くないのが安心したし嬉しかった。

明確な線引きがあったフェイスだけじゃなく、ギャングの集まりに留まった三人の中にも途中でついていけなくなって離脱した子や、最期までついていけた子が居た。地元で同じような感覚を共有していた仲良し四人組の中でも三者三様の考え方があって、それぞれのスプリング・ブレイクを描いている辺りが多面的で良かった。思い返してみれば誰が離脱するかしないかっていうのは、旅に出る前にフェイスがした教会の仲間との会話で示唆されていて丁寧な構成だった。何処かに行って帰ってくるという物語も古典的ではあるし、それが現代的な話に落とし込まれているところもしっかりしていた。

四人の保釈金を払ったギャングの人が犯罪は平気でするけどなかなか優しくて、悲しい生い立ちから今の生き方をするしかなかったという話や、皆が自分から離れていくという孤独を背負っているところとか、観ていて悪い印象が全然なかった。この人のあだ名がエイリアンというのも良かったな。誰とも話が合わなかったり社会に適合出来ない時、ひょっとして自分ってエイリアンなのかなーって冗談半分で思う時あるけど、この人もそんな感じなのかなぁって思ったりした。

はっちゃけた音楽や場面の切り替えで鳴り響く銃をスライドさせるような不穏な音とか、音響が効いていて映画館で観れて良かった。色彩もカラフルでめちゃくちゃ鮮やか。撮影監督がギャスパー・ノエ監督と組んでいるブノワ・デビエなだけあって、先日観た『climax クライマックス』を連想した。climaxが好きな人は映像的にも気にいると思う。あと過去現在未来の映像が交錯し出す演出や同じ言葉の反復が、時間の感覚が曖昧な状態を表しているようで、観ていて登場人物の心理状態に溶け込んでいる感覚になって映画の中により入り込めた。
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