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まぼろしの市街戦の小のレビュー・感想・評価

まぼろしの市街戦(1967年製作の映画)
4.0
"正常"な者と"異常"な者のズレや行き違いにより、戦争の愚かしさが面白おかしく描かれる寓話でコメディ。「毒を以て毒を制す」じゃないけれど、戦争の狂気を浮き彫りにするともに、それに対抗するは狂気しかないのかも。

第1次世界大戦末期、敗走中のドイツ軍が、時限爆弾を仕かけて撤退したフランスの小さな町に、イギリス軍の兵士プランピックが爆弾解除を命じられて潜入する。住民たちが逃げ去った町で、取り残された精神病院の患者たちが解放の歓喜に大騒ぎ、プランピックはその輪の中に巻き込まれる。

"正常"な兵士たちが"異常"な患者たちに、結果的に翻弄される。ホントウに異常なのは一体どっちなのか…、と。

人間同士が殺し合う戦争はないほうが絶対に良い。しかし社会全体が戦争に向かっていく場合、刃向かうことができるだろうか。自分1人だけならできるかもしれないけれど、家族に累が及ぶ場合できるだろうか。

できることといえば、せいぜい「なりすまし」。表面的には戦争に協力するようにふるまいつつ、心の中で反戦の気持ちを捨てず、何らか抵抗の術を考え実行し、納得するくらいかもしれない。

でも本作を観ていると別の「なりすまし」方があるかもしれないという気がしてきた。それがどういうことかははっきりとしないけれど、戦争という“異常”に対抗するための“異常”な方法みたいなことがあるのではないかと。

本作が製作された1965年はベトナム戦争の真っただ中。同戦争では多くの米帰還兵がPTSD(心的外傷後ストレス障害)を患った。だったら、いっそのこと…。そんなことも考えてしまった映画。

●物語:4.0
・上手くできている。考えさせる。

●他 :4.0
・結構大がかりで、見ごたえあり。
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