朱音

執行者の朱音のネタバレレビュー・内容・結末

執行者(2009年製作の映画)
2.0

このレビューはネタバレを含みます

韓国では1997年12月31日に23人の死刑執行を最後に10年間におよぶ死刑執行停止状態を経て、2007年12月に事実上の死刑廃止国となった。
本作はその事実を踏まえた上でフィクションとして12年振りに3人の受刑者の死刑執行が決まった刑務所で繰り広げられ人間ドラマとなっている。

設備も旧く、実際に執行経験のある刑務官がたったひとりで、他は人の生死に携わる経験から縁遠い状況で公務にあたっていた若年層が殆どという設定が興味深い。執行者に掛かる精神的負担や罪悪感を描き出すのに適切な設定ではないだろうか。

ただ、本作の脚本や演出のアプローチはあまりに情緒面に寄っており、説得力に欠けるばかりか稚拙にも感じられる。
死刑制度の是非をロジカルに対立構造として語るくらいの気骨を見せて欲しかった。
本作ではまるで皆が揃ってイヤだイヤだと嘆いているに過ぎない。

刑務所自体の雰囲気が弛緩していて、シリアスと軽快な場面の繋ぎ方もぎこちなく、全体に緊張感がないのも物語から求心力を大きく損なっている。
もっと言えば収監された犯罪者達の凶悪さを見せるための描写が限りなく少ない。

恋人が妊娠したことに対して主人公がとる態度というのが死刑執行者としての職務との命をめぐるジレンマという対比で描かれるが、これは果たして必要だったのか賛否の分かれるところ。
朱音

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