茜

アンチヴァイラルの茜のレビュー・感想・評価

アンチヴァイラル(2012年製作の映画)
4.8
みんな狂ってる。期待以上。

セレブに感染したウイルスを販売し、一般人の身体に注射する行為が流行している近未来という時点で、よくそんな設定を思いついたなと感心してしまった。
確かに現実でもお金出して人の唾液や尿を購入する人がいる世界なんだから、あり得ない発想ではないのかもしれないけど、精神的にゾワッとくるものがある。

そのセレブウイルスを取り扱う企業の注射技師であるシドは、自宅でそのウイルスを培養して裏ルートに売り飛ばしたり、彼自身も崇拝する人気女優ハンナのウイルスを体内に取り込んだりとやりたい放題。
案の定シドは身体に異常をきたしていくんだけど、その徐々に変調をきたす様子が凄くリアルで、俳優自身が本当に病気なのかと思ったくらい。
シド役のケイレブ・ランドリー・ジョーンズのナチュラルに病んでる感じが最高だったけど、実際は役作りにとても苦労したらしくて少し安心した。
ケイレブの端正だけど神経質そうな顔立ちとか、線の細い感じとか、身体のそばかすすらも生々しく見えて、まさにハマり役だったと思う。

映像は白を基調とした場面が多く、無機質で潔癖な印象を与える反面、この世界の闇はとても汚くて深い。
その白い世界に濁ってドロッとした血が混ざると、こちらにまで鉄の臭いが漂ってくるようだった。
シドの夢で身体にパイプを刺し込んで口が変形してるシーンが凄く印象的でクローネンバーグの血を感じる。
ラストシーンも完全にイカれてて、最初から最後まで狂気を貫いてくれたところも良かった。

興味が沸いて監督の事を調べてみたら、インタビューでは冗談も多いお茶目な人という印象で、来年には二作目の長編も発表予定とのこと。
監督自身デヴィッド・クローネンバーグの息子と言われる事に対してどう感じているのか分からないけど、私自身がこの映画に興味を持ったきっかけは、やはりお父さんの名前が大きかったので、今作ではまさに自分が期待してたものを見せてくれたという感じ。
最近のデヴィッド・クローネンバーグの映画は個人的に物足りなさを感じていたので、より今後のブランドン監督の作品が楽しみになりました。