このレビューはネタバレを含みます
1845年にオレゴン州に移住しようとしている3家族と案内人のミークが道に迷うお話。Meek Cutoffは実在するルートらしい。
色味が西部劇(?)ぽくないなと感じましたが、話が進むにつれてどんどん美しく見えてきました。黄色味がかった空のが堪らなく美しく、光量をかなり落とした夜の風景とのコントラストもあいまって、非常に印象的でした。
テスロー夫人の凛とした雰囲気と、ミークの生来のペテン師のような佇まいが素晴らしい配役。特にテスロー夫人は、決定権のない存在として女性が描かれるなかで輝いていました。
荒涼とした空気感も、ほぼ無音の情景と時折効果的に流される劇伴によって抜群に引き立てられていました。装置としての原住民も素晴らしかったです。
明確すぎるほど眼前に答えが転がっていながら、それに手が届かない状況に醸成される不安感。倒れたジミーの儀式の様子には特にそれを感じました。葬送とも祈祷ともとれる緊迫感に痺れる。
物語の行方はラストでは描かれませんでしたが、漠とした根源的な不安感そのものを、一種の密室で見事に描き出した傑作でした。