ひとりごとです

マレフィセントのひとりごとですのネタバレレビュー・内容・結末

マレフィセント(2014年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

自分を見ていてくれる人の存在

始まりは命の恩人
「私の翼」になったディアヴァルがずっと隣にいて、瞳を向けてくれている事実は、マレフィセントを大きく支えていただろうなあと思った

「真実の愛」
みんなから愛されるだろう、の呪いを受けて、自らも愛してしまう

憎たらしい子
だけどすぐ死なれては復讐にならない
しかしその「だけど」は彼女を見るうちに違う色を帯びていく

もう「戻ることはできない」
という事実は
人の心の外側を鉄の棘のように
ガチンガチンに固めていく

ステファンはマレフィセントに
「許された」けれど
「あの城で暮らす」彼の夢、野望が
消えることはない
満たされない何かがある
マレフィセントが人間界で彼を見守り続けていたら変わったのか
だが、王になり、妻を迎えた彼が
「変わらず」に
「この城で暮らす」ことに
固執し続けていく様子から

「もう戻ることはできない」

この過去というしがらみに
呪われてしまったんだろうと思った
妻の最後の時も、彼が見ているのは今にも崩されてしまいそうな自分の「位置」
彼が最も愛すのはそんな自分なのかもしれない
だけどもっと、もっと早く
彼が何か「良いこと」をして
その「位置」へ上り詰めていく様子を
誰かが見ていてあげられていたならば
こんなことへはならなかったのかもしれない

だからこそマレフィセントが
いろんな理由をつけて
彼女を「守ってきた」様子を
ただ黙って見続けたディアヴァルの存在は
果てしなくでかい

彼がいたからこそ
マレフィセントは
愛する、という心を
忘れずに済んでいたように思う

強くて、信頼できる翼の代わりに
理解して、寄り添ってくれる翼を
手に入れていたマレフィセント

優しさは、正統な行動は、
正義は、
誰にも見てもらえないまま
分かってもらえないまま
黒く染められてしまえば
それはどんなものでも埋められない
大きな大きな穴になる

殺すことはできない
彼らの戦いは
愛の破片を感じる

人間は弱い
その棘をくぐり抜けて
大切なところへ触れられた時

「戻ることはできない」事実を
受け止めて

「目の前の真実」を抱きしめられたら

いいのに。

それが難しい。

分かってはいても。
自分が決断をして歩んでしまったその足跡を、簡単に「過ち」だと認めることは出来ない。

過ちの中にあった、
「今を捉えた」その瞬間を
誰かが拾ってくれたなら

変われたのかもしれない。