タケオ

ペイン&ゲイン 史上最低の一攫千金のタケオのレビュー・感想・評価

3.9
1990年にマイアミで実際に起きた誘拐事件を映画化したブラック•コメディ。監督は『トランスフォーマー』シリーズ(07〜17年)で知られるマイケル•ベイ。本作は制作費2600万ドルとベイにしては非常に低予算な作品だが、その分不謹慎なギャグや悪趣味描写といった彼の歪んだ作家性を存分に堪能することができる。主人公には『ブギーナイツ』(97年)のマーク•ウォールバーグ、「ロック様」ことドゥウェイン•ジョンソン、後にアベンジャーズのサム(ファルコン)役でその名を轟かすこととなるアンソニー•マッキーといった大スターたちが大集合。脳味噌まで筋肉でできているかのようなボディ•ビルダーたちの滑稽な姿を、異様に高いテンションで見事に演じ切っている。脇を固めるトニー•シャリーブ、エド•ハリス、レベル•ウィルソン、ケン•チョンら個性派俳優陣も必見だ。本作の主人公たちは皆、人生の「勝ち組.負け組」という言葉に敏感だ。何故なら、彼らは日々筋トレに勤しみ「努力してきた人間」だからである。「アメリカン•ドリーム」とは、'勤勉'と'努力'によって勝ちとれるものだと彼らは信じているのだ。『ロッキー』(76年)のように、『スカーフェイス 』(83年)のように。だが、もちろん現実はそうではない。いくら努力しようと報われない人間もいれば、生まれた瞬間から裕福で恵まれた人生を約束される人間もいる。「勝ち組.負け組」という言葉で二分化できるほど、現実というものは単純ではない。だがもちろん、彼らはそんな現実を受け入れない。いや、彼らの(悪い意味での)確固たる信念を前には、どんな現実であろうと意味を失ってしまうだろう。「俺たちは努力したんだ、筋肉モリモリの誰もが羨むスーパーマンだ。のうのうと生きてるだけの金持ちから相応の金を奪って何が悪いんだ?」人間という愚かな生き物は、たとえ偏っていようと己の思想のためにはどこまでも残酷になれる。本作は、そんな事実をコメディとして堂々と描き切ってみせたのだ。
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