B5版

スノーピアサーのB5版のレビュー・感想・評価

スノーピアサー(2013年製作の映画)
3.2
ディストピアSFものとしてはなかなか強引な運び出し。
この手の話はすぐ辟易してしまうタチなのだが、この無理のある列車の運用自体が現代の資本主義の暗喩だと知り感心した。
とっくの昔に破滅しても不思議ではない行先の見えない容れ物。コロナ禍の今、世界が如何に脆く儚いものかを知った後では、私達の社会が脱線せず走り続けていることこそ奇跡の様に思える。

この映画は現実の格差社会を模して凝縮した作りの列車で起こるドラマである。同じ乗り物の乗組員にもかかわらずそこには富めるものと病めるもの隔たりが扉によって区切られている。
そうある様に仕向け慣れ、暴力装置に怯え慣れ生きることだけが目的となった最下層な民。彼等がいくら喘いでも富裕層に声は届かない。
後々の「パラサイト」に通ずるテーマ性を持った今作だが、描写がやや単純で軽薄でもあると思う。
映画を観る上でシンプルであることは重要だが正義VS悪の構図が過剰である。それでも主人公の終盤の吐露で大分緩和されたとは思うが歴代作品と比べればクセがない仕上がりだったなーと思う。
また、監督作品は深刻な社会問題や世相を容赦なく描く一方で、人間味あふれるコミカルな言動やおかしみのある間の置き方で笑わせてくれるのだが、今回はシリアスに全振りしたのか作風が違いすぎて戸惑った。
いや、普通に面白いんだけどね。

監督作品に存在する一枚岩ではいかない人間の痴態込みの生き様というか、不気味にも爛々と輝く生命力を持った等身大の人間に対する眼差しが私は好きなのだと再認識。
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