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わたしはロランスのRのレビュー・感想・評価

わたしはロランス(2012年製作の映画)
4.5
またまた見てしまいました、グザヴィエドラン。これを見ると、なるほど、近年のドラン映画が薄味になった、とか、メインストリーム化した、とか書いてる人がいるのも納得。こんなに癖が強かったのか。この頃はゴリゴリのアート系映画やったんやね。僕的には、最近の作品の方を先に見てしまってるから、そっちの方が好きだなって思う。奇抜さはないけどもっと自然になってる。もちろんこっちもこっちで全然好き。もっと尖った我流っぽさが面白い。ただ、尖ってるゆえにガチャガチャもしてるなーと。これは好みの問題なのでしょう。ストーリーのエモさは今も昔も変わらない。本作は、ロランスという青年が、ある日、突然、僕はほんとは女だった、これからは女として生きる、と恋人に打ち明けるところから始まる。彼女のフレッドからしてみたら、は? 私が今まで愛してた全てを否定して、女になるの? 納得いかない!と。君が愛してたのは、僕のジェンダーなのか? と、いきなり超難問! 翌日からメイクして、女装して、ようやく自分の人生を自分らしく生きることを始めるロランス、しかし、彼女からしたら、それをたやすく受け入れることはできない。でもフレッドはロランスを心の底から愛してるから、頑張る。変わるのはジェンダーだけで、気持ちは何も変わらない。ロランスは、変わらずフレッドを愛してる。だが彼、いや、彼女の状況は変化する。ロランスを取り巻く環境は、彼女の変化を受け入れる準備ができていない。職場からは追い出され、母は、関わりたくない、ただ、父を怒らせないためだけにやめてくれ、と。恋人のフレッドはめちゃくちゃイイヤツなんです。こんなイイ女を映画で見たことがない。ロランスのためにめちゃくちゃ頑張る。何より自分がロランスを愛してるから。けど、つらくてつらくてたまらないのには変わりがない。ロランスのことが心配でもある。その気持ちが一気に爆発する食堂のシーンは最高だった! 演じてるスザンヌ クレマンの演技がめちゃくちゃ良くて釘づけになった! この女優、クールでカッコいい! この後も何度も激情に揺り動かされてめちゃくちゃになっていく、こんなカッコ悪い女をこんなにカッコよく演じることができるなんて。驚異的である。ロランスが愛することをやめないのも当然である。もちろん、ロランスを演じるメルヴィル プポーも素晴らしい。はじめ自分が女になっていく途上においては、男臭さがどうしても抜けない感じになってるんやけど、後半になると、誰が見ても、これは人間として美しいとしか言いようがない、ってなるくらい美しさが光り出てる。世の中には、トランスジェンダーなどのシスジェンダー以外の人しか愛せないスコリオセクシュアルというタイプの人たちがいる。それもこの映画を見ると納得できる。この申し訳なさのなさ、何があろうと純粋に自分を自分以外の何ものでもない決めて生きる決意、その強さ、その脆さ。そこに性的魅力を感じる人がいるのも頷けるし、ずっと人間の本能に近い。特に、社会的マジョリティーに従うためだけに社会的マジョリティーに従おうとする能動性によって人格が形成される日本では、多くの人が、自分は男だから女を愛す、女だから男を愛す、という枠組みの中で、それが本能であるかのように性愛を経験する。そう考えると、スコリオセクシュアルは、人間性というものにより重きを置いたセクシュアリティーと言える。僕は、今後社会を大きく変革できるアクターのひとつは確実にLGBTQだろうと考えるが、まぁその話は長くなるので置いといて、ただ、もちろんフレッドはストレートの女なので、女である相手を愛するのはめちゃくちゃ難しい。その葛藤をスタイリッシュに、ド派手なほどカラフルに、まるでMUSIC VIDEOのようなタッチで描いている。スタイルのカッコよさにおいては、ドラン映画No.1はこれかもしれない。次から次にめくるめく映像美とイアオルガズムが大展開する大展覧会。映画館で見たらドーパミンダダ漏れになっていたことでしょう。明らかにビッグスクリーン前提の演出が多数。特に、僕の心から愛するFade to Gray(URL参照)に合わせてコレオグラフされるパーティーシーン、手紙の文字がガン!とスクリーン全体に突如として現れる演出! あと、無数の服が舞い落ちてるあの意味不明のシーン! いやー驚いた! クリエイティビティー爆発しまくり! ところが、すべての艱難を経て、最後には何もかもがうまくいく! なんてことが起こらないのが現実世界。苦しかった。そして、まさかのラストシーン。心がイタイーーーーー😭 ドラン! すげー! が、僕個人としては、やっぱ最近の作品の方が好きかなーと思った。エモーションよりスタイルが重視されすぎて、命の根源にまでは響いてこなかった。が、それでもなお、愛さずにはいられない、ソウルフルな映画であることには間違いない。3時間弱あるけど、素晴らしい人生のジャーニーでした! また見たい!

Fade to Gray
https://youtu.be/UMPC8QJF6sI
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