CureTochan

ウォッチメンのCureTochanのレビュー・感想・評価

ウォッチメン(2009年製作の映画)
4.3
2回目の鑑賞。英語の字幕を見たら、あまりわかってなかった点が判明した。コメディアンにとって自分の行動そのものが人類に対するシニカルジョークだったとか、マンハッタンちゃんが普通に若い女に走ったくだりとか、原語のセリフはやはりキレが違う。長い話を短くしてセリフも多い、ちょうどテネット級に長い。一回では無理だ。

アメリカ人てのは、世界をどうするか、よく考えるのだなぁ。彼らこそウォッチマンなのだ。むかし東京で散髪屋に行ったとき、そこのオヤジが政治家の話を何気なくしていて、特にイデオロギー的なものでもなかったので地方都市よりも身近に国政があるのだなと思った。世界人類が平和でありますように、という看板があるけど日本人はそんな大層なものにアンガジュマンしてるつもりはないから浮いている。

原作を読んでいるアメリカ人からは辛い評価のようだけど、なんも知らずに観て、傑作だと私は思う。ただこれはヒーロー映画ではなく、青春映画である(老人映画でもある)。ひたすら、ヒーローたちのソーシャルネットワーク、あるいはサークル活動のなかで話は進む。つかヒーローたち以外は人として描かれない。ヒーローたちを人っぽくしようと、セックスまわりがリアルに描かれる。シェイプ・オブ・ウォーターの悪者と同じだ。ベトコンもアメリカ人も等しく殺せる彼らだが、仲間はなかなか殺せない。それは人殺しになるから。

サークル活動の中身は、飼育委員だ。シムシティと言ってもよい。全体の運命を左右できるようになれば、人は一段高い存在になる。現にヒトは動物たちに対してそうなっている。ヒトよりも上になって、人が滅びそうなクライシスに対して、5人のために一人を殺すトロッコ問題を考える話である。

このトロッコ問題の答えだけど、現実には何もしないのが正解だろう。問題の設定で一番無理があるのが、必ず予想通りになるという仮定だ。自分がしたことの結果も100%はない。一人を殺したあとで、実はほっといてもその先で脱線して、5人は死ななかったことがわかるかもしれない。ほっといたらどうなるかは、ほっとかないとわからないのだ。この辺、オチも含めてオジマンディアスがもっと切れ者であってほしいシナリオではあった。

メインの主人公であるナイトオウルは金持ちで徒食している。言うたら民主党支持層である。ロールシャッハは最底辺の代表で、自分を苦しめた不条理に対する憎悪から、正義や真実に重きを置く。そして、いずれもヒト一般の生命にはあまり重きを置かない。他人の命なんてその程度のものだから、戦争映画も愛好されるのだ。そのへんを突き詰めれば、スターシップ・トゥルーパーズみたいなシニカル映画になれたかもしれないが、流石にそれは無理で、彼らキャラクターが魅力的になってしまったからでもあるが、少し中途半端になったのが欠点だろう。あと、グロい。
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