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タイピスト!のkomoのレビュー・感想・評価

タイピスト!(2012年製作の映画)
4.1
田舎娘のローズ(デボラ・フランソワ)は、不器用だがタイプライターを打つ早さは誰にも負けない自信を持っていた。その才能でルイ(ロマン・デュリス)という経営者の秘書に抜擢されるが、タイプ以外の仕事が苦手なローズにルイは難色を示す。そして契約を続けるための条件として、『タイプライター早打ち大会』への出場を打診するのだった。


完全たるスポ根映画。
実際、監督は『ロッキー』のような映画を撮りたかったとおっしゃっていましたが、なんだか日本のスポ根漫画に通ずるような青臭さ(良い意味で)もあり、お洒落な画面とのギャップが魅力的でした。

『シェルブールの雨傘』にも似たカラフルワンピースの世界かと思いきや、ヒッチコックの『めまい』をオマージュした技巧性の高いカットが現れたり。多岐に渡る映画愛のおかげで、王道なストーリーでも数多のスパイスが効いていて飽きさせません。

ローズの上司兼コーチあるルイは鬼の如く厳しく、彼女の望むことを裏切ってばかり。その実、ローズのひたむきな美しさに惹かれており、気持ちの良いくらいにツンデレ。
自身の部屋を貸してまで特訓の環境を与えたり、走り込みに付き合ったり、あの手この手を駆使してローズを勝利へと導きます。後半、ローズを愛しすぎてるがゆえに彼女が栄光を駆け上がってゆくのを素直に喜べなくなる話の展開も美味しかった。

ローズ役のデボラ・フランソワとっても可愛い。不器用な自分を恥じているものの、誇れることは徹底的にやりこむ心根の強さ、誰にでも物怖じしない天真爛漫さに憧れます。

女性的な華やかな構図ではありますが、『タイピング=社会で必要とされる技巧』であると考えると、女性の社会進出を讃える映画であるとも言えますね。
そんなふうに『フランスって柔軟な国なんだ』と思わせて来てからの、「アメリカにはxxを、フランスにはxxを」と締めるところ、憎いなぁ〜。
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