Same

フリークス(怪物團/神の子ら)のSameのレビュー・感想・評価

3.5
ずっと見たかった、1932年制作のサスペンス映画。これがAmazonプライムにあるとは。

トッド・ロビンズの短編小説『スパーズ』を元に、若い頃にサーカス巡業に参加していたこともあるトッド・ブラウニング監督が映画化した作品で、当時まだあったフリークショー(見世物小屋)に実際に出演していた障害者や特異な体質を持った方々が、フリークスとして沢山出演しており、フリークス役の方々は当時の見世物小屋界のスーパースター達です。
公開から88年経った今日でも突出して挑戦的な作品ですね。今は見ることはできないという意味でも歴史的に価値のある映画ですよね。
ブラウニング監督はひどい交通事故により身体のあちこちが欠損しており、その経験もこの映画に込められているかもしれません。

当時の批判は物凄かったようで、本来90分あった本編は60分程度にカットされ、イギリスでは30年公開禁止になっていたそうです。
また、監督のトッド・ブラウニングもこの作品のせいで映画業界から追放されてしまいました。

時代背景を考えるとフリークスたちが神秘の存在だった時代から、科学技術や医学の進歩によって異常な状態である事が分かり始め、民衆の彼らに対する意識が「可哀想な人たち」になってしまった事は必ずしも幸せな事ではなかったかもしれません。

【あらすじ】
映画の舞台はフランスの旅回りの曲馬団(サーカス団)。サーカスのシーンは無く、サーカス一座のオフの日常が描かれています。
小人のハンスは同じく小人の曲芸師フリーダと婚約していましたが、美貌の健常者で軽業師のクレオパトラに魅せられていました。
自分に熱を上げているハンスから金を巻き上げていいように利用していたクレオパトラでしたが、ある日ハンスが莫大な財産を相続するという話を聞き、裏で内通していた健常者の怪力男ヘラクレスと共謀し、遺産を狙って結婚した後にハンスを毒殺することを画策するのですが…

以下ネタバレ








映画の前半と後半の転調がお見事でした!
前半はフリークスたちの特徴を生かしたコメディパートで構成されています。
髭女がガリガリ男との子供を産むのですが、産まれたのは「男か?女か?」と聞かれ女だと伝えると「よかった、じゃあその子も髭女だ」とか、シャム双生児の女性がそれぞれ別の相手と婚約していて、片方の彼氏の吃音男がもう一方が夜寝ないでずっと本を読んでやがるってぼやいたりとか、コメディとしては微妙な(笑)ネタでほのぼの話は進みます。

後半、クレオパトラとヘラクレスがハンスを狙ったことが露見すると、フリークスたちの反撃が始まります。暴風雨の夜、2人がフリークスに襲撃されるシーンは圧巻です。馬車の下でナイフを刺され這いつくばりながら逃げるヘラクレスに、腰から下の無い男や手足が無い男、小人などが言葉も発さずジリジリと迫るシーンはゾッとしますね。
カットされた30分には、ヘラクレスが局部を切り落とされるシーンや、クレオパトラがフリークスたちに襲われるシーンなどがあったそうですが、公開版は確かにこれからというところで終わっちゃって物足りない感じですよね。

今見れば、清い心のフリークスVS醜い心の健常者なんてチープな構図ではなくて、どんな形に生まれようと人間の業は深いよね!って映画だったと思うのでギャアギャア批判されるほどの映画ではないと思うんですけどね。
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