ある日、アパートの一室で腐乱死体となって発見された兄の死臭を嗅いで以来、朝倉ユキは死臭を嗅ぎ分けられるようになった。兄はなぜ引きこもり、生きることをやめたのか。

田口ランディ原作
「コンセント」「アンテナ」「モザイク」からなる第1部作目
作者の実体験を下敷きに描かれた作品で、喪失感と共感。生と性をテーマに心理学的オカルト的スピリチュアル的作品。原作読んでるとどうしても、映画の方は軽く感じ中身がないように思えてしまった。主人公、朝倉ユキ演じる、市川実和子も新人だったのか？演技が素人過ぎたためか？終始見てるのには辛く、脚本も中途半端な世界観とストーリー展開に、正直もったいないという印象であった。初見で見たらかなり唖然とさせられる様な内容であり作品かもしれないが、原作は最高なので是非読んでもらいたい。

過去鑑賞。中原俊監督作品。市川実日子、村上淳、つみきみほ、木下ほうか主演映画。田口ランディのベストセラー小説を映画化。
兄の死をきっかけに自身の内面を見つめ直し、新たな自己に目覚めてゆくヒロインの姿を描き出す。

フリーライターのユキ（市川実和子）は、引きこもりの兄がアパートの一室で餓死したと知らされる。兄の部屋を訪れると、コンセントに繋がれたままの掃除機が残されていた。それ以来ユキは、嗅覚異常や兄の幻影に悩まされるようになる。

これまた賛否が分かれる映画ですね！精神的なものを映画にするのは難しいですね。市川実日子だったから成立したのでは！

2002年
田口ランディ原作。
ユキ(市川美和子)はラブホテルで1本の電話を受ける。兄が死んだという両親からの知らせだった。

ユキを駅に迎えに来た父親が車中、長男の死を巡って母親に罵声を浴びせ続ける。母は激しく嗚咽して泣くばかり。。このシーンを見ただけで、家族の歴史がわかるような凝縮したシーン。

兄はアパートでドロドロにからだが溶けた状態で発見された。毛穴という毛穴から血が滲み、アパートの床板をじゅくじゅくに湿らせている。。

ユキはそんな凄惨な現場に立ち会い、特殊清掃業者の男と会話を重ねる。
ダイイング・メッセージ。死者は最後にメッセージを残すのか？
このシーンの会話が印象的。具体的なメッセージでなくても、言葉にする前の形にもならないメッセージを死者はかならず残していると男はユキの言葉に同調した。

ユキは新しい掃除機がコンセントにささったままになっている様子に兄のダイイング・メッセージを感じた。コンセントが形見になるように、男はペンチでコンセントを切断しユキに手渡した。
こうして、兄の死をめぐるユキの探求が幕を開ける。

作品自体は、教授の不気味さ。市川美和子の、すこし棒読みな台詞回し、妙に時代？を感じさせる演出で、入り込むのに少し難儀を感じていたが、生と死が同居し、その狭間に佇むユキの存在が神秘的で中盤からはどんどん惹き付けられていった。

本作の面白いところは、ホラー映画になる手前のギリギリのところで精神世界を描いているところだと思う。
亡き兄が折に触れ姿を現すけれど、亡霊のような表現はなされない。思念と呼ばれて、我々と同じ次元に存在し、心をむければすぐに繋がってしまうような想いを指している。

そして、その想いはよき想いであれ、苦しみから滲み出た想いであれ、生者、死者に関わらず空間に溢れてるのだと思う。
ユキはその思念に反応するようにセックスに没頭し、肉体を通じて反応を起こさせた何かを無心に昇華させていく。だから、ユキの求めるセックスは激しく能動的で、飢餓も感じさせる。はじめ市川美和子の濡れ場を作ることで集客目当てのエロなのかな、と思っていたが、トランスに没入するためのひとつのスイッチと考えると、コンセントというタイトルと相まって、その行為が重要性を帯びてくる。

劇中「カミダーリ」という言葉が出てくる。わたしはその土地、カルチャーの中で成長してきたので、それが意味することがよくわかる。シャーマンとして、じぶんの殻を突き抜け、脱皮する前には何段階もの厳しい試練、狂気が待っている。それを修行者は孤立した場所でひとりで耐え抜かねばならない。狂気は凄まじいもので、そこから抜け出せずにあちらの世界をさ迷うものもいると聞く。
(これは一昔前の話なので、現代のシャーマンがどのように誕生しているのかは不明だ。)

だから、ユキを襲った狂気も自然に受け止めることができた。

吹き飛ばされんばかりの嵐を抜けたその先には、凪ぎひとつない静かな湖面のような精神世界が待っている。

後半、カミダーリのような、狂気をくぐり抜けたユキの顔は静かで、凛とした面差しに変化していた。シャーマンとしての覚醒。開花。

本作が意味するところの「コンセント」具体的に書いてしまうと、ネタバレになってしまうので控えるが、人間という生き物の深淵さに触れた作品である。

自然と共存せず、隔絶した世界のなかで前進しつづける人間社会。唯物論的な発想ではそろそろ立ち行かなくなっているのではないだろうか。

「コンセントを抜いて」消化出来ない様々な感情のうねりから、ひととき自分を解放している人々は少なくないのかもしれない。