茜

六月の蛇の茜のレビュー・感想・評価

六月の蛇(2002年製作の映画)
3.9
梅雨にぴったりの大雨映画。
こうして季節に沿った映画を観るというオツな楽しみ方が出来る辺り日本に四季があって本当に良かった。

塚本晋也監督のエロティックスリラー。
タイトルの通り劇中ではずっと大雨が降り注ぎ、画面のトーンは冷たい真っ青でありながら、登場人物達は皆がギトッと汗をかいて湿っぽい印象を受ける。
心の電話相談室で働く人妻が、彼女によって救われた相談者にストーカーされる話。
このストーカーから彼女の隠し撮り写真と携帯電話が送られてきて、写真を返して欲しければこちらの指示に従えと脅迫され、その脅迫に従ううちに倒錯的な何かに目覚めていく。

人妻役の女優さんがボーイッシュなベリーショートっていうのも、偏見的だけど外の顔と内の顔っていう隠れた人格を体現してるようで余計イヤらしく見えて良かった。
潔癖症で常に台所やお風呂の掃除をしている、見た目にも冴えない旦那とはセックスレスで刺激も何もない。
そんな夫婦関係に塚本監督自らが演じるストーカーが介入してくる事によって、夫婦共に抑圧していた感情や失っていたものが解き放たれて開放される。
まるでストーカーを出汁にした夫婦の愛情物語だと思ったし、ストーカーだって人妻の事を心底想う故の純愛行動だったんだと思う…偏愛過ぎてどうしようもないけど。

ヌードでイヤらしい場面も多いものの、スケベ心丸出しに見えないのは青みが強い映像の美しさと大量の雨がいい感じにマッチして芸術的に観えるからかなー。
あと音楽担当はお馴染み石川忠さんで、本作もやっぱりこの人のサウンドがよく活きてて、持ち前の鉄っぽいインダストリアルは勿論しっとりムーディーな曲もあったりで相変わらず私のツボを押されまくる。
77分という短尺でスッキリ綺麗に纏められた、隙間時間でお手軽鑑賞出来る良作。
茜