茜

上海異人娼館/チャイナ・ドールの茜のレビュー・感想・評価

2.3
若いころ寺山修司に心酔していた時期があって本やら映像作品やらJ.A.シーザーのCDやら色々買い集めてたんだけど、本作はずっと未見だった。
主演にクラウス・キンスキー、脇を固める女優陣には若き日の高橋ひとみや大好きな山口小夜子、しかも池畑慎之介まで出ているとあれば絶対に押さえておきたいと思った一本。

でも実際観てみた感じは「うーん、寺山ってこんなんだったっけ」っていうのが真っ先に浮かんだ感想。
今でもはっきりと覚えてる10代の頃に初めて「田園に死す」を観た時に受けた衝撃は本作にはない。
美しい世界観や美術装飾、個性的な俳優陣の素晴らしさは勿論評価したいのだけど、映画としてはどうも平凡に感じてしまう。

これだけ素晴らしい素材が揃っていて何故だろうって思ったんですが、何やら本作の編集ってフランス側で行われてたみたいなんですよね。
だからいまいち寺山修司の感性とズレてるのかなと思ったりもした。
やってることは凄いのだけど見せ方が単調で退屈に感じてしまうし、彼の他作と比べて圧倒的に切れ味が悪い。

まぁでも今後こんな映画が作られる事ってきっとないだろうし、美術装飾と俳優陣の醸し出す退廃的な美しさは間違いなく本物。
ただ「あぁ、これがこれが寺山か」とは思わないで欲しいし、寺山修司という人間に興味があるのであればもっと別の作品を観た方が良い。
茜