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Miss ZOMBIEのchikichikiのレビュー・感想・評価

Miss ZOMBIE(2013年製作の映画)
4.1
 "母と子と愛と"

SABU監督による異色のゾンビ映画!!


 ある日、幸福な寺本家に送られてきた大きな荷物。
 『肉を与えるな』と言う取扱説明書と拳銃が同封されたその荷物の中には、檻に入れられ、怯えた様子の若い女性が横たわっていた…。

 物語のほとんどがモノクローム映像で紡がれる構成によって、非常に引き込まれる独特の世界観(異世界感)のある作品でした。
(特殊メイク等にチープさを感じさせないと言う点でも非常に観やすかったです!)

 何か"見えないモノ"に絡めとられて行くかのような影の使い方、窓辺から差し込む光の立体感、暗闇での光源(炎)の揺らめき。
 そして、その光に質量を付与する水の演習などなど…。
 陰影のコントラストによる風景描写や心象描写が素晴らしく、覗き穴的な役割を果たすフレーム内フレームの使い所も絶妙!!

 本作はそもそものゾンビの設定等についての説明的なセリフが少ないために、場面転換直前の緊張感が高まるタイミングで、かかるノイジーな音楽も含め、ストーリーを想像させる繊細な音作り(たわしや主人公の履物が石畳を擦る音や風の音など)がとっても印象に残る作品でもありました。

 また、物語にしても、突飛な設定をいきなり突き付けてくる序盤や息子を溺愛する母親、主人公を取り巻く周囲の人々による「揶揄・嘲笑・凌辱」などが、やや誇張して描かれる前半から、全ての状況が一つ一つ反転し行き、緊張感が高まる後半へと移行する、静からながらもスリリングなストーリー展開。

 何に対しても基本受け身な主人公が物語を牽引していくかの様に見えて、実は他人の言動からの影響だけではなく、彼女自身もまた気づかぬうちに影響を与えている(受け入れる形で)と言うのが面白かったです!!


そして、終盤。主体性を獲得した彼女から、様々なモノが一気に溢れ出すラストにはグッときました!

 
 所謂"ゾンビ映画"ではないので、そう言うモノを期待して観ると肩透かしを食らうかもしれませんが…

 興味のある方はぜひっ!!
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