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自転車泥棒のchikichikiのレビュー・感想・評価

自転車泥棒(1948年製作の映画)
3.7
 第二次世界大戦後のローマで、貧しく暮らす父と子、家族の物語を描いたイタリア・ネオリアリズモの代表作。


 哀しい物語でありながら、シンプルなストーリーに、笑えるシーンや美しいシークエンスもあり、それらが88分という短い尺の中に綺麗に収まっている作品でした!

 戦後の困窮で、失業者が溢れ、仕事もなく、食料品も不足している中、やっとの事で働き口が見つかり、質屋から取り戻した自転車で仕事に就き、家族3人幸せな生活が始まると思った矢先、油断した隙に大事な自転車を盗まれてしまう。

 そんな、主人公の置かれている状況を周囲の人間との対比等によって、つぶさに捉え、的確な心理描写を通して、主人公が徐々に追い詰められていく様が丁寧に描かれておりました。


 メインとなる親子の視点で物語を追って行くので、どうしても主人公を責め立てる街の人々には、常軌を逸した集団の恐ろしさを強く感じてしまったのですが…

 しかし、相手方の立場に立ってみれば、ただでさえ苦しい状況の中で、警察が介入するような揉め事が身近で起きるのは避けたいものであり、それが結果的に過剰防衛に繋がってしまったのではないかと。

 したがって彼ら(彼女ら)の行為はあくまで、自らの生活(ないし、テリトリー)を守り、身に降りかかる火の粉を払わんとするための団結であったのではないかと思います。

 また、個人的にはあの怒りを伴ったような過激な言動は主人公個人に向けられているというよりも、社会そのものに対して窮状を訴えている様にも感じました。


 戦後当時の市井の人々のリアルを切り取った様な作品ではありますが、言わずと知れた名作だけあって、現代でも十分通じる普遍性を持った作品ではないかと思います!!
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