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ザ・エンドのhorahukiのレビュー・感想・評価

ザ・エンド(2012年製作の映画)
3.6
4月12日公開『マローボーン家の掟』に向けて♫

同日公開『ハロウィン』の予習も間に合うかどうかわかんないのですが、こっちも疎かにできないので同時進行で予習しようと思います。

新作の『マローボーン家の掟』は、『永遠のこどもたち』『インポッシブル』で脚本を担当したセルヒオGサンチェスの初監督作(短編とテレビ映画除けば)なのでめちゃめちゃ期待してます。とはいえ『インポッシブル』はそこまで好きじゃないんですけどね…。

そんで本作は共同脚本作なので、どこまでサンチェス色が出てるのかはわかりませんが、内容的には面白かったです。

20年ぶりに集まることになったかつての仲間たち。昔のように森の中の別荘で再会を楽しんでいたが、良く問題を起こしていたアンヘルだけが来なかった。深く気にせず焚き火を囲い昔話で盛り上がっていたら、雷が鳴った時のように空が一瞬で明るむ。それを境に全ての電子機器が使用不能になり、仲間がひとりずつ居なくなっていく…。いったい何が起こっているのかというお話。

ハンスメムリンクの『最後の審判』の3枚のうちの真ん中の下半分だけが意味深にドアップで映されるプロローグから推測すると、本作はまさに「審判」を描いた作品なのだろうと思いました。様々な事柄が描かれた絵画?でありながら、裁かれてる場面のみを切り取るという露骨な映し方なので、本作は人々が裁かれる様のみを扱ったものだというわかりやすい道標的プロローグとして機能していて見やすかったです。

消えていく者たちはみんな消える直前に「審判」を下される決定的な言動をする。その直後に現れる山羊だったり獅子だったりといった動物も象徴的で、それぞれが持つ宗教的な特性がどちらの審判を下されたのかを仄めかしている。

借りてきたDVDの調子が悪くて残念ながらプロローグから本編スタートあたりの数分が見れなかったので的外れなこと言ってるかもしれませんが、聖ヨハネの前夜祭の日である6月23日にアンヘルが主人公に声をかけたことから今回の不可思議なことがスタートすることから考えると、本作は主人公の心の中に巣食った悪霊を払うというポジティブな物語と捉えることができると思います。

主人公の現状については詳しくは語られませんが、その言動の端々から他者を意識し過ぎるがあまりに精神的な行き詰まりに悩み、自身の価値を見失い、落ち込んでいるような節が見受けられる。予言者であるアンヘルはそこを予知し(というより心の内を読み取り)、主人公に再生への気づきを与えたというのが本作の大枠なのではないかと思います。

そう考えると、プロローグ以降の本編はあくまでも主人公の心象世界の出来事となる。そして主人公以外の者たちが裁かれるのは、主人公が最後の会話で語られる気づきを得るための試練であり、主人公が心的解放に向かうための通過儀礼。

「見てくれる人がいるから存在する」だったり「見てくれる人がいるから自分に価値が生まれる」だったり。そういった他者本意の発想という呪いから主人公を解放する言葉を授け、寄り添うのが生命を意味するエヴァという名の人物だというのはとても象徴的であると感じました。エヴァというネーミングが露骨過ぎるので宗教的にもっと深い意味を持たせてるのだと思いますが、キリスト教詳しくないからそこまでは分からず…。

基本的には何も語らない映画なので解釈を楽しむ作品ではあるのですが、とても雰囲気が良くて楽しめました。噛み砕けてないところも多いけど、物語的な表面的辻褄というくだらないことに必要以上に囚われない自由な表現や作風が好きだったし、そのあたりがスペイン映画だからこその強みなのかもしれません。めちゃくちゃ評価低いけど私は好き。
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