茜

トム・アット・ザ・ファームの茜のネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

想像していたよりも重いテーマで、色んな事を考えさせられる作品。

最初は兄のフランシスが持つ暴力的で威圧的な生臭さが苦手だったのに、
物語を見進めていくうちに、彼の背負う孤独や抑圧といった苦しさが表面化して悲しくなった。
トムは代わりが欲しかったし、フランシスは理解者が欲しかったように思う。
だからこそ、支配的でいびつな表現で、不器用に彼らは気持ちを交わしていたように感じる。
2人でタンゴを踊るシーンや、首を絞められている時のトムの顔は、支配に身を委ねる恍惚の表情に見えました。

フランシスが仕切るファームは、まるで母や周囲の目に支配されたフランシスが生きる世界の縮図のようで、
そんな世界を抜け出したかったフランシスにとって、弟の理解者であったトムは、自身の理解者にもなりえる希望だったのかなぁ。
結局最後に逃げ出したトムは、フランシスというよりは、フランシスの生きる偏見だらけの世界に恐怖を感じたように思えた。
窮屈な世界で生きる人達の不器用なすれ違いがとても切ない。

主人公のトムは何を着てもいちいちオシャレで、こなれた感じのするイケメンでしたが、
まさかこの人が監督ご本人だとは思いもよらず…他の作品も観てみたくなりました。
茜