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オッド・トーマス 死神と奇妙な救世主のMOCOのレビュー・感想・評価

4.0
「心配ないよ、君がこれから行くのは魂の家で、優しさと驚きがあふれている所だ。
 かわいそうに、短い人生だったね」(オッド・トーマス)

 原作者ディーン・クーンツの初期のホラー作品はスティーブン・キングと比較されるほど評価されたのですが、反面酷評も多く、日本では途中から「超訳」のアカデミー出版と契約したことに熱烈なファンからの批判もありました。
 どこまでの作品を初期というのかわかりませんがクーンツはホラー作家と称されることを嫌い初期のホラー作品を封印しているため今では読むことが出来ない作品が多く最高傑作と思う『ウォッチャーズ』も書店では見なくなってしまいました。ゴールデンレトリバー好きなクーンツが著した「ある施設を逃げ出した特殊な訓練を受けたゴールデンレトリバーの話」は長編にも関わらず、あっというまにエンディングがやってくる傑作です。

 オッド・トーマスを主人公にした小説は
『オッド・トーマスの霊感 』(2003年)
『 オッド・トーマスの受難 』(2005年)
『 オッド・トーマスの救済 』(2006年)
『 オッド・トーマスの予知夢』(2008年)の4作品、映画は『オッド・トーマスの霊感 』を基に作られています。
 クーンツ作品の映画化となると、残念なことに『オッド・トーマス 死神と奇妙な救世主』以外は全て駄作です。
 優れた脚本が作られなかった、あるいは有名監督に監督されなかったことにクーンツの小説の映画化の悲劇があります。

 96分という短い時間で、テンポの良い展開と音楽、まるでタイムトラベルでもしているかのような回想・・・というスタイルで作り上げたステーヴン・ソマーズ監督の『オッド・トーマス 死神と奇妙な救世主』は間違いなくヒット作品の匂いがあるのですが、残念なことに完成後、スポンサーと出資でもめたために訴訟に発展し、制作国のアメリカでは劇場公開されていないようです。


 南カリフォルニアのピコムンドに住む20歳のオッド・トーマス(アントン・イェルチン)は幽霊を見ることができる特殊能力を持ち、犯罪に巻き込まれ亡くなった幽霊の訴えで犯人を捕まえオッドの能力を知っている警察署長ワイアット(ウィレム・デフォー)に犯人を引き渡し、魂(幽霊)を本来行くところに送っています。

 幼い時から結ばれる運命を持つ恋人ストーミー・ルウェリン(アディソン・ティムリン)もオッドの能力を理解しています。

 赤いボーリングシャツを着た男達に助けを求められ、彼らが次々と射殺される夢を見た 日、人が死ぬところを見るために集まる怪物ボダック(映画のエイリアンみたいだけど透明な奴)がピコムンドに集まり始めます。
 ボダックを見ることができるのはオッドだけですが、ボダックは見られていることに気がつくと命を奪いに来るためオッドは気づいていないふりをしています。

 尋常ではない数のボダックが集まっていることからオッドは大量の人間が死ぬことを予測するのですが、何が起こるかは全くわかりません。

 オッドはある男を尾行するのですが誰かにはめられていることに気がつき、ワイアットも銃弾に倒れ、一人で戦う決意をします。
 オッドはワイアットの部下達悪魔崇拝者「POD(プリンス・オブ・ダークネス)」の企みで大量殺人はショッピングモールで行われることに気がつきます。そこには赤いボーリングシャツのチームが集い、ストーミーの働くショップが・・・。

 オッドは自動小銃を乱射する覆面の犯人を射殺して、最小限の犠牲者で食い止めストーミーが銃の犠牲になっていないことを確認するのですが、大量殺人は爆弾を積んだトラックが本命だと分かり・・・。
 
 犯人に撃たれながらもトラックを無人の空き地に運ぶことに成功し、モールの600人以上の人間を救ったオッドはヒーローとなり、銃傷も癒えストーミーと倖せな時間を過ごすのですが・・・。


  2009年からの映画『スター・トレックシリーズ』のチェコフ、2009年の『ターミネーター4』のカイル・リース、2011年の『フライトナイト/恐怖の夜』のチャーリー・・・私の好きな映画で印象深い役をこなしている主演のアントン・イェルチンは、2016年自宅敷地内で自家用車に押し潰され27歳の若さで亡くなっています。寂しげな顔が素敵な好きな俳優でした。
 もうあの寂しげな顔が観れないと思うと悲しくてたまりません。本当に残念です。
「短い人生だったけど、きっと優しさと驚きがあふれている魂の家で彼は倖せに・・・」
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