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そこのみにて光輝くのminorufukuのレビュー・感想・評価

そこのみにて光輝く(2013年製作の映画)
4.8
仕事を辞めて日々を漠然と過ごしていた主人公が、パチンコ屋で知り合った陽気な男に連れられて彼の自宅に招かれる。そこで主人公は男の姉と出会い二人は惹かれ合うのだが…という話。

同監督のきみはいい子を観ていて、本作も評判は高いのものの地味で暗そうとの先入観から観ていなかったのだが、ようやく鑑賞。

過去を引きずり孤独に生きる男と、家族に多くの問題を抱え身体を売って一家を支えるヒロインが不器用ながらも愛を深め合っていく過程が丁寧に描かれている。口説き文句とか愛の言葉とかは一切無し!

綾野剛演じる退廃的で無骨な主人公が言葉は少ないながらも一途にヒロインを思い、行動する姿がとても魅力的。池脇千鶴もさすがの存在感で幸薄いヒロインを見事に演じていた。
重くて鬱なストーリーなのだが、弟役の菅田将暉が粗暴ながらも明るく人なつっこい役柄で、物語を引っ張っていたため思ったよりも楽しくスイスイ観られる。
その他にも池脇千鶴の不倫相手役の高橋和也の暴力的で狂気に満ちた演技が圧巻。出ている人全員がハマり役だと思った。

終盤、ある事件が起き、一気に不穏な空気へと変わる。ここからの役者陣の緊迫感漂う演技は凄まじい。恋路だけではなく、家族の問題や不倫、男の友情など表現されているものの密度が非常に濃い。
菅田将暉の泣きながらのセリフには号泣。

そして、事がひと段落したあと、朝の光の中で綾野剛と池脇千鶴が一切のセリフ無しで見つめ合うラストシーンは映画という媒体の凄さを改めて感じさせてくれる。すごい作品!

ドロドロの不倫関係を演じた池脇千鶴と高橋和也が、きみはいい子では仲良し夫婦役なのも面白い。
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