140字プロレス鶴見辰吾ジラ

ファインディング・ドリーの140字プロレス鶴見辰吾ジラのレビュー・感想・評価

ファインディング・ドリー(2016年製作の映画)
4.7
メメント・モリ

この素晴らしき世界で

前作「ファインディング・ニモ」の続編。「インデペンデンスデイ」もそうだが商売のために続編を作る気か?と無粋な考えを持つ必要はなかった。素晴らしかった。

「ID4R」でもそうだが映像美に関してはこのタイミングでの続編決行は悪い判断ではない。目の前いっぱいに広がる海からタコのハンクの擬態能力を最初に目にする瞬間まで贅沢な空間に入られたことに感謝したい。

個人的には「ファインディング・ニモ」より「ファインディング・ドリー」の方が好きだった。ピクサーだから出来る強気な選択なのか障害者をテーマに物語を紡ぎ、それを子供たちに教え、大人たちに再考の余地を与えるのだから毎度毎度脱帽せざるを得ない。

障害者に対してのある種のイライラや健常者が優位に立とうとする見栄を張るような言い回しといったブラックな部分が細かくではあるが見え隠れしていて、特に2匹のアシカの明らかに目の焦点が奇怪な3匹目を目の敵にし排除しようとする姿は気分が悪い。さらにコメディタッチだがヤドカリの生活場で大声を上げるドリーを制止しようとするマーリンのセリフ、そして何よりドリーの母親は何を思ってムラサキの貝殻が好とドリーに言ったのか?

劇中でドリーが「そんな難しいこと1人じゃできない」と狼狽えるシーンで分かるように障害者は誰かなしには生きられないことが苦しいほど暗示されている。

それでも仲間として登場する
視覚障害のジンベイザメ
エコロケーションができないのだとシロイルカ
明らかに奇怪な鳥
そして海に帰ることを恐れる7本脚のタコのハンク。
このハンクの苦悩がなんとも「ショーシャンクの空に」を想起させてしまう。
しかし人が1人では生きられないようにジンベイザメのディスティニーとシロイルカのベイリーがバディとしてドリーを助けようとするシーンはミッションインポッシブルの如くスパイアクションのようだった。

上記とは異なるが「トイストーリー3」でもあったように生き物に対して慈しみのない子供たちの描写が恰も戦争映画の空襲シーンのようにディザスター要素も入れて表現されたのには笑えたし笑えない。
余談になるがディスティニーのエサの魚の死骸が映るシーンは子供向け作品にしてはブラック風味のゴア描写だっただろうか?

健常者ですら1人で生きられないのだから障害者ならなおのこと…だが周りを見れば仲間がいて、大事なことを教えてくれた特別な人がいる。なんと「素晴らしき世界」なのだろうか!幸せの黄色いハンカチの如く用意されたあるスポット演出をカメラが引きのショットで見せるシーンは憎い。

何度絶望の淵に置かれようと自分ができる精一杯を目に映るものすべてから引き出そうとする様は感動的で、たしかにそのシチュエーションに陥ったのは自分の能力のなさかもしれないが諦めない姿勢を前に前に持ち続けるドリーの姿が印象深い。遂には海を離れ離れ技の如くアクション映画さながらの演出を雪崩れ込ませる。

嗚呼、「この素晴らしき世界で」と頭をよぎることも想定してだろうか?あの曲がスローモーションカットとともにヒットする演出は照れ隠しだろうか?最高に眩しかった。

諦めなければ不可能はない!と陳腐な応援ゼリフかもしれないが、それぞれハンディを負った者たちへの賛歌としてのエピローグのみなの集合した日常風景に胸を打たれた。





我々にだって不可能はない。
そうだ!
「エイリアン」を邦画でリメイクしよう!


主演は???


もちろん
八代亜紀で。