ベイビー

冬冬の夏休みのベイビーのレビュー・感想・評価

冬冬の夏休み(1984年製作の映画)
4.0
トントンにとって、小学生生活最後の夏休み。母親が病気で入院してしまったため、妹のティンティンと二人で、田舎に住むおじいちゃんの家へ預けられることになりました。

見方によっては子供が知らない土地でひと夏を過ごしただけの地味なお話。そこに映し出される人は皆大らかで、その時代の緩さみたいなものがその地味な作風と重なります。

母親が病気のため子供たちが田舎で暮らすという設定は「となりのトトロ」にも少し似ていて、古き良き時代の夏の風情が心地よい作品として、誰もが自分の少年・少女時代を思い出すのではないでしょうか。

話の内容はトトロみたいなファンタジーや劇的な事件があるわけでもなく、ただ小学生が夏休みの絵日記に書くようなエピソードが展開していくのみです。

一見地味なストーリーにも見えますが、その細かなエピソードこそがこの物語の本質そのもの。子供の身に起こるエピソードは、たとえそれが些細な出来事だとしても、その些細な毎日の驚きが人の心を育て、人生を育てる瞬間なんだと、作品を通して教えてくれます。

そしてこの作品の裏のテーマはもう一つの"子供"についてのお話。この世はトントンたちのような、幼い子供ばかりが"子供"ではありません。親にとってはいくら年をとっても自分の子供は子供のままです。子供が人様に迷惑を掛ければ、その責任を取るのも親の仕事です。

その例である二人の大人。一人はいつまでも親の脛をかじり続けるトントンの叔父の昌氏。もう一人は身体は大人だが知性は子供のまま育ってしまった女ハンズ。

二人は大人の代表であり、子供の代表でもあります。

子供から大人
子供のままの大人
無邪気に遊ぶ子供
責任が取れない大人
子供でいられる期間
小学生最後の夏休み…

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この作品は、何気なく描かれているエピソードを糸のように織り重ねて一枚のキャンパスを作り出しています。

流石はホウ・シャオシェン監督。やはり僕はこの方の作品が好きですね。一見淡白な装いを見せといて、しっかりとした別のテーマを作品に忍ばせてくれている。それはまさに職人技で、たとえその細工に気付かないとしても、それが作品の奥深さとなって作品を輝かせてくれるのです。

子供たちの自然な姿を撮るために、ドキュメンタリータッチが続く前半。そのうち物語が固まって行くに連れ、アングルまでしっかりキメてくるあたりは流石だと思いました。

そして音楽は、ホウ・シャオシェン監督と同じく台湾ニューシネマの代表的な存在であるエドワード・ヤン氏。(と言ってもあまり音楽は流れてなかったような…?)

あと忘れちゃいけないのが、トントンの妹のティンティンを演じたリー・シュジェンちゃん。あんなに幼いのにしっかりとした演技を見せてくれて、本当立派な女優さん。そして何より、シュジェンちゃんがおばあちゃんに肩たたきをするシーンは超絶可愛いんです。

「そんな力の入れ方じゃ、おばあちゃんの肩凝りはちっとも解れないよ」って言いたいくらいソフトタッチな肩たたきなのですが、でもシュジェンちゃんの一所懸命な眼差しをみたら絶対にそんなこと言えません。

その肩たたきに心を奪われ、ついシュジェンちゃんにFan! clip を付けてしまいました。めでたく僕がFan一番乗りです。

ちなみにですが、僕に少女を愛でる趣味はありませんよ。僕の名誉のために強く言わせてもらいます!きっとこの作品を観ていただければ僕の言っていることが分かるはずです!

と、ここでアマプラ会員の方に耳寄りな情報。

アマプラでこの作品を普通に検索すると、そこでヒットした作品は有料で400円なのですが、会員特典プライムの"キッズ向け映画"の奥の方に、デジタルリマスター版が隠れており、無料で観れるようになっています。

この作品に興味がある方は、是非こちらから観てください。きっと僕が言う"可愛さ"の意味が伝わると思います…
ベイビー

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