タケオ

プリズナーズのタケオのレビュー・感想・評価

プリズナーズ(2013年製作の映画)
4.1
ペンシルヴァニア州で小さな工務店を営むごく普通の男ケラーの幸せな日常は、娘のアナが失踪するという最悪の形で暗転する。アレックスという青年が容疑者として拘束されるが、自白も物証も得られずすぐに釈放されてしまう。しかし、アレックスのとある発言から彼が犯人であると確信したケラーは、逆にアレックスを誘拐し自らの手で口を割らせようと拷問を開始するが•••。

「メッセージ」や「ブレードランナー2049」などの作品で成功を収め勢いを増すドゥニ•ヴィルヌーヴ監督の元にヒュー•ジャックマンやジェイク•ギレンホール、ポール•ダノといった実力派俳優陣が集結したヒューマン•サスペンス‼︎

あらすじだけで腹痛になりそうな重い内容と153分というなんともボリューミーな上映時間になかなか手が出ない方も多いかもしれませんが(私もそうでした)、再生したが最後 あまりにも異様な群像劇に問答無用で引きずりこまれます‼︎

進展のないまま過ぎ行く時間、蛇と迷路に異常なほどの執着を示す不気味な男、教会の地下で発見された謎のミイラ、暴走する父親の愛情、地道に事件を追う刑事の苦悩といったあまりにも膨大な要素を何一つ破綻させることなくまとめ上げる脚本が実に見事‼︎

曇天や薄暗い森が醸し出す閉鎖感と二転三転する事件の緊張感、キリスト教や信仰を絡ませた重厚なメッセージを前に、時間どころか呼吸すら忘れてしまいそうでした。

アメリカでは年間80万人もの行方不明児童がいるといわれています。そういった点を考えると、本作を「怖い映画だな〜」なんて具合に他人事として鑑賞することは私にはできません。

もし自分の娘が突然失踪したならば?
もし自分が本作の登場人物たちと同じ状況に陥ったならば?

怒りと絶望と狂気にとらわれた囚人たち(プリズナーズ)の姿を描いた本作は、明日の私たちの物語なのかもしれません。

誰が裁き誰が赦すのか?
善と悪の境界線は果たして存在するのか?

重い一撃が魂を揺さぶる力強い作品です。
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