ぎー

インサイド・ヘッドのぎーのレビュー・感想・評価

インサイド・ヘッド(2015年製作の映画)
4.0
ピート・ドクター特集2作品目。
久しぶりに鑑賞したけど、何度見ても心を動かされる映画。
人の中の感情を擬人化して、心の中の世界を舞台とする世界観自体が完璧!
最初見始めた時は主人公のヨロコビさえいれば良くって、なんならカナシミは感情メンバーにいない方がハッピーなんじゃないかと観客も思うところがあるのに、終わった時には全ての感情が本当に重要なんだと納得できるから、そのストーリー展開も見事。
そしてそれぞれの感情の擬人化、キャラクター設定も素晴らしい!
感情を擬人化する映画はアメリカでも日本でも決して初めてでは無いけど、やっぱりこのキャラクター作りは、そのデザインも含めてピクサーならではだと思う。
軽快なストーリー展開や魅力的な世界観から子供でも楽しめるし、キャッチコピー「これは、あなたの物語」の通り、大人も共感し感情移入できる、アニメーションの良さを全面に発揮した魅力的な映画だった。

主人公の人間は、ライリーという女の子。
日本では感情というと喜怒哀楽を思い浮かべるけど、この映画で登場する感情は『ヨロコビ』『カナシミ』『イカリ』『ムカムカ』『ビビリ』という5つ。
最初は日本人の感覚とは違うし、喜びだけがポジティブなので、そのバランスはどうなんだろうと思ったけど、しっかり納得させられるから流石。

この5つの感情が司令部でライリーの心をコントロールしているという設定、人生で重要な意味を持つ思い出は特別な思い出として保管されるという設定、そしてその特別な思い出がライリーの個性を形作るという設定、どれも創造的だし、実際その通りだと思う。

ライリーは家族の都合でサンフランシスコへ引っ越し、学校も転校することになる。
そこでの経験から「カナシミ」の特別な思い出が生成され、そのドタバタの中でヨロコビとカナシミが司令部からいなくなってしまう。
そして、ヨロコビとカナシミを失った司令部は大混乱になり、ライリーの心は安定感を失っていく。
多分子供の時、何かしら似たような経験を誰しもがしているはず。
初めての人、初めての環境へ順応できず、混乱し、戸惑い、感情表現がうまくできなくなり、ハッピーじゃなくなる。
その心の中の動きをこんな風に描くのは本当に凄いと思った!

ライリーだけじゃなくって、お父さんやお母さんなど、それぞれに司令部があって、その中で感情たちがやり取りして、行動が決定されている風景は興味深かった。

司令部から脱落してしまったヨロコビとカナシミはライリーの子供時代の空想のキャラクタービンボンと出会い、一緒に司令部を目指す。
ここで登場する「考えの列車」や「記憶のゴミ捨て場」、「夢製作スタジオ」といった世界観も本当に魅力的だった。
1番印象に残っているシーンは、「記憶のゴミ捨て場」からビンボンが自らを犠牲にして、ヨロコビを助ける場面。
見る人はその自己犠牲の感動的な演出だけでなく、こうやって子供時代の想い出が消えていくことへの共感からも、涙を流さずにはいられない場面になっている。

ヨロコビとカナシミが司令部に戻り、カナシミの活躍でライリーは家出を思いとどまる。
無理して感情を押さえ込んでいると心が壊れちゃう。
カナシミがあることで、人の心は安定していられるし、周囲の人とのコミュニケーションを取れるようになる。
そのことが全く説教がましくなく、無理やり感もなく描かれていた。

個人的にはこの映画は感情だけでなく、色んなキャラクターの人がいるから世界が前に進んでいることをも伝えようとしているのかなと思った。
カナシミはたしかにジメジメしていてネガティブだけど、心のマニュアルもしっかり読み込んでいて、ヨロコビと一緒に司令部に戻る大きな支えとなった。
多分、いや、間違いなくヨロコビだけだったら司令部には戻れなかったと思う。

繰り返しになるけど、世界観、ストーリー、キャラクター設定どれも練り込まれていて、子供から大人まで楽しめる、ディズニーピクサーらしい傑作だった!
大竹しのぶのカナシミの吹き替えもとっても印象的だったな。

◆備忘ストーリー
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/インサイド・ヘッド
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