八木

バイオハザード:ザ・ファイナルの八木のレビュー・感想・評価

4.3
このシリーズを好んで6作見ているような人間には、間違いなく誠実で渇きを潤す気概のある完成度になっていると思います。僕のように、惰性で全作見てしまっているだけの人間であっても、アリスという最大の謎にして放り投げられていたキャラについて「ああ、こいつただのケンカおっぱいキャラじゃなかったんだ」「俺たちはちゃんとこのキャラに愛情を持ってたんだ」と気づかされるような結末が準備されていて感動がありました。
良くも悪くもな映画バイオハザードらしさが今作も何か所もあって、それを捕まえて、完成度が云々ということもできると思います。でも、まあ、だってバイオハザードだからさ。シリーズ7作目の完結作に対してそれらに引っかかるのはリテラシーの問題で、むしろシリーズの様式美とサービス精神を押し通してくれたたくましさと、作り手が喜びに満ちて製作していることを喜ぶほうがいいと思うわけです。特に、賛否両論だと思うのが、今まで蒔いていた6作分の話のタネを、ほぼ冒頭10分ほど、ナレーションと会話劇であっさり回収するのですね。こういう「アクション見せたいからストーリーの謎でひっぱりません!」という雑さは、このシリーズの誠実さだと思うし、やはりシリーズで一貫してたんだなと感動するところだったのですよ。アクションもそうだし、1作目を意識したソフトスプラッタな敵キャラ・ギミック、『ファイナルデッド』さながらの『死に方大喜利』を見せてくれるサービス精神とかな。個人的には、最終作まで、ちゃんと原作リスペクトをあちこち見せて、特に最後のパートナーにクレアを選んでくれたこともとてもうれしくて、初めから最後までずっと好感を持てた。
そりゃ、籠城戦の都合の良すぎさとか、格闘予測システムの万能さとザルさとか、言い出せばキリないですよ。しかしそういう映画じゃないのです、これは。ダラダラとただ続いていたシリーズに発生した縛りを乗り越えて、アリスへの思い入れを作ってくれたというだけで、劇場で見る価値は大いにありました。シリーズで見ている人には結末を見てほしいと願うところです。
八木

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