マサキシンペイ

ベイマックスのマサキシンペイのレビュー・感想・評価

ベイマックス(2014年製作の映画)
4.0
誰もが笑って泣いて楽しめる秀作。
ストーリーの軸として、日本でのプロモーションのされ方に見られた兄弟の絆やベイマックスの愛らしさも魅力十分だが、基本的にはアメコミヒーロー戦隊モノの側面の方が濃厚。
昨今のアメコミの王道パターンと言える、「正義とは、ヒーローとは何か」を自問する、悩めるヒーロー像だ。勧善懲悪の単純な構図ではなく、敵役の論理や正当性をも描く、「相対的な視点」の盛り込み方は、昨今のアメリカの世相を象徴するかのようだ。

ところでこの映画で個人的に最も印象的だったのは、舞台となる街の建造物だ。
制作陣によると、サンフランシスコの風景をベースに日本のニュアンスを加えた大都市、その名もサンフランソウキョウ(奏京)。そびえ建つアメリカ的な摩天楼と、日本の歓楽街を思わせるネオンの猥雑な灯りを背後に、路地と電線が複雑に絡まり合う。瓦屋根のビクトリアンハウスが立ち並ぶ通りは満開の桜並木、鳥居と五重塔を合わせたような意匠を施した主塔のゴールデンゲートブリッジ。若干シノワズリの風味が混ざるのも、「ゲイシャ、サムライ、ニンジャー!」で日本を語るアメリカ人のご愛嬌ということで、かえって味わい深い。
異なる文化圏の「伝統的な造形」の魅力を混合した、「新しいアイデア」の詰め合わせはコマ送りで隅々まで見たくなる。
マサキシンペイ

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