八木

インヒアレント・ヴァイスの八木のレビュー・感想・評価

インヒアレント・ヴァイス(2014年製作の映画)
3.0
この監督さん、どうやら何かと語られやすい映画監督のようで、基本的に銃で人が死んだりパイオツやおちんちん的な映画が好きな僕にとっては、一撃で理解するのが難しい印象でした。もともと全人種の「名前を覚える」ということが苦手なので、話が進むごとに登場するたくさんの人物と担わされた役割を頭に詰め込んで必死に線をつなげて、落ち着いてきたらタイトルや映像から何を言いたいか考えて…と忙しくしていると、すげえ重要臭いシーンや重要臭いセリフ、が登場してまた考えての繰り返し。
ジャンルに分けたらミステリーで間違いないとは思うけど、明らかにミステリーに重きを置いてないことはわかる。縁の切れてた元カノと幸せに復縁する話ではない。主人公が抱える問題を解決する話なのだろうけども、1回みた限りでは、とりあえずドラッグ中毒であることくらいしか問題がわからない。わからないつーか言葉にできない。
劇中で、インヒアレント・ヴァイスというのは保険会社の用語で「避けがたい危機」みたいな意味を指すと出てきます。必ず落ちる落とし穴というか、その人が持つ業って雰囲気ですかね。劇中であからさまなインヒアレント・ヴァイスを持っていたのは、元カノが一番わかりやすいけど、ビッグフットやロス警察そのものにも示唆されたり、麻薬そのものを指す気もする。時代背景の描写や、いいところでニール・ヤングがかかるのも何か関係してるんだろうが、よくわからん。
ただ、一つだけこの映画で確信めいたものがありまして、それは「打算的であること」です。もしこの映画に魅力を見出すのだとしたら、登場人物から、1970sのロサンゼルス風土・文化から、この映画自体の作りや結論に至るまで、計算された打算で構成されているということです。「わりと近くで飛び移りやすいから」という理由で移動する石を選んで全員が動き、結果的に浮かび上がったもの(僕はわかりません)にぐっときて感動できたりするような気がしています。
これで僕が、ポールトーマスアンダーソンリテラシーのある人間だったら、過去作を踏まえて理解できないことを楽しむことができるのでしょうが、今のところ全く見ておらんので、「考えさせられて答えが見つからない苦しみの方が多い映画」になっておりました。
八木

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