るるびっち

ライト/オフのるるびっちのレビュー・感想・評価

ライト/オフ(2016年製作の映画)
3.9
ホラーはアイデアがゴルゴである。いや「命」である。
新鮮なアイデアを、鵜の目鷹の目で探している。
ライトがつくと消えて、ライトが消えると現れる。
思いつきそうで思いつかないアイデアが秀逸。
事実このワンアイデアで監督は世に出れた。
ライトが無い時代には存在しない、現代文明型幽霊なのだ。
幽霊も進化している。次はITでしか見れないITゴースト、5Gゴーストが活躍するだろう。中国産のTikTokゴーストも居そうだ(15秒だけ現れて踊る幽霊、個人情報を抜き取る)。
実際には見えるということは網膜に光が入らないと不可能なので、真の闇ではない。間接的なライトなら見えているという事だが、細かいことは良い。

真の恐怖とは他人に理解されない、ということである。
母親は観客から見ると、子供を苦しめる毒親に見える。
しかし、彼女の孤独は世間のみならず子供にも理解されないことだ。
これは幽霊の孤独と同一だ。だから母親は、幽霊のダイアナにシンパシーを感じている。むしろダイアナを理解しているのは自分だし、自分を理解しているのは彼女だけだと思っている。世界で二人だけの友情なのだ。
これが逆に、子供にも観客にも狂っているように見えるのだ。

世界で誰にも理解されない孤独は、いかほどのものであろう。
それは世界で誰にも姿を見られないダイアナの孤独に通じる。
彼女は実は姿を見られたいのだ。自分の存在を認めて貰いたいのだ。
だから正面から襲ってくる。
後ろから襲えば良いのに、わざわざライトのオンオフに乗じて正面から襲ってくるのは見られたいからだ。存在を認められたいからだ。

ホラーは勿論恐怖の感情を盛り立てるものだが、優秀なホラーはそれ以外の感情も描くものだと思う。
ブラックライトで浮かび上がるのは、恐怖と共にダイアナの怒りと悲しみ。壁一杯に悲しみが浮き上がる。

主人公の姉は母親を理解できず、逆に母親に理解されないことで家族を捨てる。彼女の孤独も、他の誰かでは埋められない。チャラいボーイフレンドでは力不足なのだ。
家族はバラバラなのだが、弟が架け橋となる。
姉と母親は互いに、「私のこと理解してよ」合戦を始める。
理解してもらうには、先に相手を理解しないといけないのだ。
誰もが家族を守ろうとしているのに、互いの立場を理解できない。

姉は母親のダイアナへの依存や、世界に二人だけの孤独を理解できない。
母親は、ダイアナへの恐怖を否定された姉の孤独を理解できない。
自分の孤独に共感されずに憎み合う。
互いに理解し合えなかった姉と母が、弟を守る一点で憎しみをライトオフする。
そこに浮かび上がるのは家族への愛なのである。
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