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HUNGER ハンガーのRのレビュー・感想・評価

HUNGER ハンガー(2008年製作の映画)
4.3
2000本目記念👏 まぁ昔のやつ削除して書き直したりするので、後日、何本目かは変わるのでありますが、ひとまず記念で。強烈な映画でした。言葉の少ない代わりに、映像や人間の行動にいろんな意味ですごい力を漲らせた、とんでもない一作だった。冒頭、普通のおじさんが朝ごはんを食べて、指輪を外し、洗面台に溜めた水に手を浸している。何してるんやろ、と思ってたら、この人は北アイルランドの刑務所の看守だとわかる。IRAの囚人たちが政治犯としてでなく、普通の犯罪者として扱われていることに抗議すべく、彼らは糞尿で抗議をする。それは、牢屋の壁に糞を塗りたくり、尿を扉の下の隙間から一斉に廊下に流す、というもの。見る直前にたらふく食べていたボクは、思わず、おーえ🤮となりました。囚人たちは、嗅覚を圧し殺し、衛生を犠牲にして、政治的要求を突きつける。髪もヒゲもぼうぼう。必死の抵抗をする彼らを無理やり牢屋から引っ張り出し、殴る蹴るしながらトイレに連れて行き、暴れる彼らを殴りまくっておとなしくさせた後、乱暴にハサミで毛を切っていく。そうする看守たちの一人が、洗面台の水に傷ついた拳を浸していたおじさんなのだ。これを見て思うのが、IRAもすごいけど、看守さんもすごい。人間性すてて無になってないとできない仕事や。人を人としてでなく、家畜のように扱う。そんな仕事に耐えきれなくなって、別室に引き下がり、涙を流す若者の姿が印象的だった。前半でもうひとつ気になったのが、同じ房の中に2人以上の囚人が入れられるのって普通なことやと思うんやけど、どれほど主義主張の堅い彼らにも自然に湧き起こる性欲はあるし、囚人のみんなが互いに掘り合うわけではないのやから、うんうん、そりゃそうなるわ。本作の面白いところは、IRAのメンバーにも、非人間的な看守たちにも、どちらにも肩入れすることなく、ただ淡々と現実を描いているところ。糞尿を処理し、清掃してる人たちの仕事の様子を延々と見せるショットは、特に興味を惹かれた。まさかそんな遠くからこっちまで掃除して来るわけではあるまいな、と思ってると来るんです! そして、後半は、いよいよ本作のタイトルとなるハンガーストライキ。それを行うのがマイケル ファスベンダー演じるボビー ハンズ。本作におけるファスベンダーの演技はとんでもない! その本気度に圧倒される。僕はこのストーリーがどのように進んでいくのか全然知らなかったので、筋骨逞しいセクシー男優として名を馳せるファスベンダーが、みるみる痩せ細っていく姿には、畏怖に近い感情を覚えた。人間ってハンガーが続きすぎるとあんな感じになるんやなー。めちゃくちゃ興味深かった。こっちの頭も朦朧としてくるような気がした。最後はものすごく重く、鈍い、衝撃。インテンシティとピュアリティが極上に高い映画だった。果たして彼らの行ったストライキに、どれほどの効果があったのだろうか。彼らの実行したどの抵抗に政府は反応したのか。政府の対応は適切なものだったのか。すべてが見ている側に委ねられるラストに、絶句するしかなかった。そして僕がずっと考えてたのは、人間の精神の力である。動物は、自然の摂理のなかで、本能と野性のままに生きているが、人間は、自分の在り方を自分で意識的に選択できるという精神構造を持ち合わせている。それは、動物的生存本能をはるかに凌駕することができる力だ。その力を我々は何に使うべきなのだろう。分断のために使うのか。画一化のために使うのか。業務を手際よくこなすために使うのか。何のために生きているかという問題が、人間の日々とる行動のあらゆる面に顕れ、ひとつひとつの身口意の積み重ねが、ひとりひとりの未来を作っていくことを、我々は常に意識しておかなければならない。そんなことを思わせてくれる強烈な映画だった。かなりヘビーな映画なので見るタイミングには注意が必要かも。けど、見る価値は非常に高いと思われます。
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