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HUNGER ハンガーのbackpackerのレビュー・感想・評価

HUNGER ハンガー(2008年製作の映画)
4.5
たばこ、タバコ、煙草。
作品を印象づける、作品を象徴するアイテムです。

舞台はIRAの逮捕者が収監されている刑務所。
ここでは、看守による暴力が激化し、受刑者達による権利回復の抗議運動が熾烈化していた。
受刑者たちのリーダー、ボビー・サンズは、ないがしろにされた権利と看守による虐待で奪われた尊厳を取り戻すため、ハンガーストライキを敢行する……。


今作の特筆すべき点は、静かであること。
台詞はほとんどなく、映画音楽も流れない。

静寂の代表シーンは、雪の中で煙草を吸うシーン。
日々囚人を殴るため、手の甲に生傷が絶えない看守の男が、刑務所の外に出てくる。
壁を背に、深々と雪が降る中、煙草を吸いながら、佇む。そこに余計な音は一切ない。

この雪のロングショットの映像美。完璧な美しさです。今作のベストショット間違いなし。

そんな静かな作品の中では、囚人の悲鳴・苦悶の声・怒りと屈辱への慟哭と、看守達の暴力・打ち鳴らされる盾の音が、一段と重みを持ちます。

さらに特徴的な演出は、長回しです。
なんと、ボビー・サンズと神父の対話は、15分を越えています!
ただでさえ台詞の無い映画の中で、数少ないまともな会話シーンが延々カットされず、動きもない。
固定ショットで、煙草の煙をくゆらせながら、ひたすら会話。
ハンスト中も数十秒の長回しが連発しますが、やはりこの長回しは別格です。

ガリガリに痩せ衰え、床擦れで血の滲むボビー・サンズを演じたマイケル・ファスベンダーの演技も必見です。
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