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不良姐御伝 猪の鹿お蝶のbackpackerのレビュー・感想・評価

不良姐御伝 猪の鹿お蝶(1973年製作の映画)
4.0
現代和彫界を変革した革命児"凡天(梵天)太郎"の代表漫画の一つ『猪の鹿お蝶』を原作とした、女侠客映画。

ーーー【あらすじ】ーーー
明治36年、金沢。政治家の黒川の暗殺を図る男・修之助は、返り討ちにあい遁走。南無三、逮捕か⁉︎と思ったところ、間一髪一人の女性に救われた。
彼女の名はお蝶。幼少期、刑事だった父を3人の暴漢に殺されて以来、その胸に復讐を誓った女侠客・猪の鹿お蝶その人だ。
数奇な縁により浅草で再開した二人は、互いに狙う仇が同じであると確信し、協力体制を敷く。待ち受けるのは、血飛沫と涙の報復劇……。
雪が舞い、長ドスが光り、血の雨が降る。お蝶度胸の鉄火肌、とくとご覧あれ!
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『猪の鹿お蝶』は、合計3作映像化されています。
一作目は、梅宮辰夫主演の不良番長シリーズの『不良番長 猪の鹿お蝶』。
二作目が本作、『不良姐御伝 猪の鹿お蝶』。
三作目は、石井輝男監督にバトンタッチして作られた続編『やさぐれ姐御伝 総括リンチ』。
中でも本作は、クエンティン・タランティーノが『キル・ビル』でオマージュしたことでも知られています。
私は、2021年末から2022年始にかけて、クラウドファンディングサイトMOTION GALLERYにて実施された「ピンキーバイオレンス映画『不良姐御伝 猪の鹿お蝶』 幻の原作マンガ初単行本化プロジェクト」で存在を認識しました。
現物到着後読んでみて、「これは映画を見てみたいなぁ」と思っていたところ、渡に船とあるじゃないですか。ラピュタ阿佐ヶ谷の『凡天太郎映画祭』が。

本作の白眉な映像と言えば、やはり雪の中の殺陣ですね。
序盤の金沢にて、身を寄せた賭場を仕切る地場ヤクザに入浴中に襲撃されたお蝶。なんとここから始まりますのが、身体には刺青だけを纏った(要するに全裸)状態で、並み居るヤクザをドスの錆にする大立ち回り。
屋内から雪降る庭へと場所を移してからは、その美しい映像はいよいよ輝きを増し、雪の上の裸足の足許だけを長回しで映すところなんて垂涎もの。なんて綺麗なのかしら。
惜しげもなくおっぱいを曝け出す、全裸に血塗れの池玲子が、眼光鋭くヤクザ共を斬り殺す姿の痛快ぶりが実に楽しいシーンでした。まだ作品も冒頭くらいの位置なのに、既にクライマックスのような盛り上がりです。
殺陣の最中に入る足許クロースアップは、ラストの政治家・黒川邸での最後の復習ぶち殺し祭りでも、一歩一歩と追い詰め登る階段のシーンにて披露され、大変に印象的です。
雪はラストにも使われます。ここでは、降る雪が降る花札へと切り替わり、最後には黒い床に敷き詰められた花札の上を歩く、というものです。この画力、たまらん。

物語は大変にテンポ良く進みます。キャラクターの説明は最低限。スクリーン一面にドカンと打ち出した説明文でサクッと進展。被せ気味のカット……。実にスピーディーで外連味たっぷりの、ハイカロリーな画面の連続です。
畳み掛けるようなアクション鶴瓶撃ちで、猛然と邁進した女渡世人を彩るのは、何も雪化粧だけではありません。
男女のSEXは勿論のこと、洋ピン、SM、緊縛、レズSEX(差別的意味合いではない事をご留意いただきたく)等のエロ要素に、ぶった斬られる腕、口から溢れる血の泡等のバイオレンスがかけ合わさって生み出される熱量。これが美しいですよねぇ。

続編も大変気になる作品でしたので、是非見に行きたいところです。
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