B5版

裁かれるは善人のみのB5版のネタバレレビュー・内容・結末

裁かれるは善人のみ(2014年製作の映画)
3.2

このレビューはネタバレを含みます

物語の始まりに広がるのは荒涼とした大地。
ばら撒いた様に放置された難破船の成れの果てと哺乳類の骸。
希望の予感は欠片も混じらない、寂寞感迸る風景にああもう絶対救いの無い話なんだろうな…と予感を感じさせる。

不正な手段により先祖代々の土地を奪われそうな悲劇の一家へことあるごとに問われるのは、神への信仰。
不信心への罰とでもいうように、みるみるうちに一家と一人は窮地にたたされ、個々の絆さえも瓦解する。
陳腐なほどの堕ち様は運命に破滅の意志があるかの如く、絵に描いたような転落劇だ。
一方腐敗しきった権力側はといえば、いそいそと教会に通う程にことが運び、仲間内で結託しては最終的に欲しいものを丸々獲得してしまう有様。

この映画を見終わった後に残る、教訓もカタルシスも終ぞない純度の高い理不尽について、どう反応すれば良いのか分からなかった。
これを不条理映画と呼ぶには登場人物皆、良くも悪くも平等に人間らしい感情で、無鉄砲に浅ましく振る舞うのだから、その括りは少し引っかかる…

結局この話の中での土地の奪い合いの是非や有神、無神論者の行く末などは単なるマクガフィンである。
あからさまな悪が神を信奉するこの映画は、はっきり神様の不在を主張している。この世界に善人を善人と定義付ける存在はいつからか不在となり、荒廃の大地に溢れかえる有象無象の諍いに対して、監督は等しくシニカルな目線を抱いているのだと感じた。

権力側の陣営にプーチンの肖像画を意図的に映してるのはストレートに挑戦的でちょっとハラハラワクワクした。
こういう忖度しない描写は映画にも全然あって良いよね。
B5版

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