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夏をゆく人々のRのレビュー・感想・評価

夏をゆく人々(2014年製作の映画)
4.6
見終わった後にものすごくじわじわじわじわと、愛おしさというか、切なさというか、感動というか、不思議な気持ちで胸がいっぱいになって、何かが出てきそう。この映画の魅力はほんとに独特で、他ではなかなか味わえない種類のものだと思う。約2時間、イタリアの田舎で養蜂場を営んでる家族のひと夏を、淡々と描いている。表面的にあんまドラマチックなことが起こるわけではないけど、実はみんな心の中でいろんな葛藤があって、それがじわりじわり伝わってくる感じがすごくいい。ストーリーの中心に、ちょっと頭の悪い頑固で昔気質のオヤジがいて、養蜂が得意な長女のジェルソミーナにいちばん思い入れがあって、自分の世界から出したくないからやたら束縛してくるめんどくさい奴。主人公のジェルソミーナは少女から女へ変わるちょうど過渡期で、外の世界へ気持ちが向き始めてて、お父さん鬱陶しいと思いつつ、その気持ちが嬉しくもある。永遠に変わらないかのように思えた一家の生活に、変化の波が、ゆっくりと、静かに、しかし確実にやって来る。不思議の国というテレビ番組、少年マーティン、養蜂場の改修命令… その波に、みんなのハートが密かにざわめく。この感じがすごく絶妙でよかった。一見ほんとに何の変哲もない様子なのに…。そして迎える、えっ!ってビックリするエンディング。あっ、そういうことなのか…って気づいたとき、ものすごく心がきゅううううってなりました。何とはかない切なさ! すばらしいおわり方! ジェルソミーナを演じた女の子の顔や演技、リアルに蜂と戯れてる自然な様子、すべてがすごくよかったし、マーティンもイケメン少年、妹のプチブスもかわいいし、まさかのモニカベルッチがすごい役で出てる笑 圧倒的な造形美なのに、近くで見るとシワシワってところが役にピッタリだった。もうおばあちゃんくらいの年齢なのかな。あと、おばあさんたち数人で歌を歌うシーンもよかったね。あぁ、ずっと田舎で素朴に生きて、そして、死んでいくんだろうなぁ、っていう。感慨深かった。
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