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バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)のBeSiのレビュー・感想・評価

5.0
今作で見納めにすれば良かったと非常に後悔する事となった。そういえば「レヴェナント:蘇えりし者」もアレハンドロ監督が手がけてましたね。2年連続でアカデミー賞で撮影賞と監督賞を獲得している彼の真骨頂は既に今作に表れていたと実感しました。以下レビュー。

かつてヒーロー映画「バードマン」で世界的人気を博していたが、今は失意の日々を送る俳優リーガン・トムソン。ブロードウェイの舞台に立つべく奮闘する毎日。そしてある日自身の手掛ける舞台の代役に実力派俳優マイク・シャイナーがやってくるのだが、次第に彼はリーガンの脅威となっていく。疎遠状態だった娘のサムにも愛は伝わらず複雑な気持ちを抱えたまま。そして精神的に追い込まれた彼を扇情するのは周辺の人間に留まらず、"バードマン"にまでその手が及んでいく......。果たして彼は自分が人気俳優だったエゴと戦い、舞台の成功を成功を収め、壊れた娘との愛を取り戻す事は出来るのか。

全編ワンカットの衝撃は凄い。この作品の場合は"ほぼ"全編ワンカットとなるが。時間の経過は分かりやすくなっているが、それを忘れてしまうほど自然な映像の切り替えによってみるみるうちに魅了される。圧巻の映像美と高いCG技術が生み出す迫力は一級品。興奮が収まらなかった。エゴに悩まされ葛藤する主人公の頭の中の"理想"を具現化したり、精神的に追い詰められた主人公が現実と虚構を区別出来ずに並列して物事を見ているという事の表現描写には感心した。そして俳優陣の演技にも注目。ゴールデングローブ賞主演男優賞を受賞したマイケル・キートンに加え、助演女優賞にノミネートされたエマ・ストーンらの演技は素晴らしいものとなっている。(ヤク中のエマ・ストーン綺麗でした......) これは、リーガンが手掛けた舞台「愛について語る時に我々が語る事」の内容に呼応するように、渇望と破壊、失望と堕落、絶望と歓喜を経験した物語の主人公と同じ境遇に立たされた男の人生再起までの"メソッド・アクティング"を綴った異色の映画。あまりにクレイジーで爽快な、アレハンドロ・G・イニャリトゥ史上最高傑作。大好きです。
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