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エヴェレスト 神々の山嶺の小のレビュー・感想・評価

エヴェレスト 神々の山嶺(2016年製作の映画)
2.9
4年前に原作を読んで、熱い物語と、まるで自分がエベレストを登攀しているような感覚にいたく感動した記憶がある。だから映画化されることを知り、とても楽しみにしていた。この映画を見る前に、電子書籍で漫画版もざっと読んだ。

それで感じたこと。この映画、原作をうまく編集しているとは思うものの、いかんせん時間が短すぎる。クライマックスのエベレストシーンに力を注がざるを得ない半面、キャラクターの描き方が疎かになってしまい、何が言いたいのか良くわからなくなってしまった。

そもそも、羽生丈二(阿部寛)が何故あれほどまでに山に取り憑かれているのか、深町誠(岡田准一)が何故あれほどまでに羽生丈二にこだわるのか、全く伝わってこなかった。なので命がけでエベレストに登攀する意味がよくわからず、置いてきぼり感が。

トラウマを抱え、山でしか自分が自分であることを証明できない羽生丈二。未熟で、困難に向き合おうとしない自分への葛藤が羽生を追う原動力となっている深町誠。原作は、いくつかのドラマを経てこうしたキャラクターの内面が浮き彫りになっていく。

しかし、映画は時間が短いからちょこっとだけ描写したり、言葉で説明して辻褄を合わせてはいるけど、それが唐突に感じたり、場合によってはスルーしてしまう。

個人的にとても残念なのが羽生。原作ではもっと超人的かつ、実は熱いハートの持ち主。なのにこの映画ではほとんど魅力を感じない。

映画の時間に収めるのなら、いっそのこと、羽生か深町のどちらかに絞るしかない気がするけど、ちょっと考えただけだと、それも難しいかなあ、と。だから素人的には、時間に解決を求めてしまうのだけれど。

原作を損なわないよう、まじめに作ると時間が足りない。じゃあどうするか。新しい試みとして、エベレストシーンのようなクライマックスはたっぷり映画、それまでのストーリーはホームページとかで漫画を読ませる(チケット購入した人に期間限定無料で)というのはいかがですか? 角川映画41周年目に期待します。
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