このレビューはネタバレを含みます
生徒の様々な問題に翻弄する新米教師、娘を虐待してしまう母親、知的障害のある少年と認知症気味の老婆の出会い。
主に児童虐待などの社会問題をテーマにした短編集が原作の群像劇。
原作は未読ですが良い作品でした。
人物は皆同じ町の住人ですが、それぞれが物語に交わる事はほぼ無く、主軸の3つのストーリーが展開していきます。
小説が映画化されると本に書かれてる細かい心理描写はどうしても伝えきれない部分がありますが、今作は映像化によって「抱きしめる」という温かさが本よりもストレートに感じられる映画だったのではないでしょうか。
説明なんか無くても、辛いとき、悲しいとき、黙って抱きしめてくれる人がいるってこんなに温かいんだなと...。
みんな抱きしめられてからの表情の変化が良かったです。
新米教師岡野(高良健吾)が生徒に出した宿題「家族に抱きしめられてくること」。
翌日の生徒達が照れながらその感想を言うシーンはリアルだなと思ったらやはりこのシーンはアドリブだそうで、芝居がかった台詞ではなく素で語る姿が良いですね。
※以下、ラストについて
ラストについて、最初見た時はそこで終わるんかい!と唐突に感じたのですが、見返して感想が変わりました。
神田さんはずっと鉄棒の所で5時を待ってたんですね。
それを知った時、駆けださずにはいられない岡野。
あの日、何も言えず去ってしまった神田さん家の前で、岡野は扉を叩く。
反応は無くても諦めずにもう一度。
良いラストじゃないか...。
どうか揚げパン渡してやってくれよ。
親父にガツンと言ってやってくれよ。
神田さんに「きみはいい子」って言って抱きしめてやってくれよ。