この疲労感が心地良い。
まだワールドトレードセンターが完成前のとき、2つの塔にロープを掛け命綱なしで渡ろうとした男の物語。
狂ってる?だから彼を愛おしく思う。狂ってるてるからか?吊り橋効果で惚れたのか?おそらく彼が夢のためにすべてを賭けているからこそ賞賛ができるのではないだろうか?
常人には理解できないからこそそのクライマックスに圧倒される。
チーム犯罪モノの側面はあるが、主人公プティに常にスポットが当たり続ける。彼の生き様に絞ったが故のあっさり感、淡々とした前半部の印象はあるがすべてはクライマックスに繋ぐため。
ワイヤーに足をかけ、はじめの一歩を踏み出すそのときの絵が美しい。霧がかった雲が晴れ彼にのみ道を許す。彼はワイヤーを支配し、タワーを支配する。畏敬すら感じされる高さの中で彼は支えてくれたものに感謝をしていく。
傍観者な我々はただただ彼の一挙手一投足に緊張感を感じ、劇中の傍観者とともに息苦しい世界に晒される。
ショーの終わりに感涙。
この疲労感と安堵感と高揚感がすこぶる心地良い。
映画に許された体感の世界。
そして2001年、彼が命を賭け彼の命を吹き込んだタワーが無残にも崩れ去った。
彼はそのとき何を思ったか?
彼の過去と現在が我々の想像力の世界の中で交差していく。
決して吊り橋効果とは思いたくない魔法の時間だった。