五十嵐藍原作「ワールドゲイズクリップス」を３篇のオムニバスにして映画化

大九明子監督、松岡茉優さん目当てでレンタル💿


来年で廃校になるため３年生しかいない学校を舞台に文化祭に向けての準備が始まるが。。
この時期独特の繊細で揺れ動く少年少女の日常を写し出す青春物
３話が独立した話ながらうっすらとかかわり合う部分も😃

「リトル・トリップ」
天野千尋監督
未来穂香×高崎香帆

「らくがき うわがき」
名倉愛監督
佐藤すみれ×大石悠馬×中山絵梨奈

「倍音」
大九明子監督
松岡茉優×古泉葵

全体的に百合っぽい💋
やはり３作目が圧倒的に素晴らしかった
松岡茉優さんのニーソ姿💕

• #マツタクオムニバス

なかなかいい作品だった。こういうジャンルの映画は普段見ないからすごく新鮮だった。松岡茉優の芝居がすごく良かった。彼女らしさが存分に炸裂してたと思う。内容については特に言うことがないです笑。

大九監督の最新作『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』公開に合わせて、無性に観たくなり、鑑賞。


[概要]

五十嵐藍(代表作:｢鬼灯さん家のアネキ｣)による漫画｢ワールドゲイズ クリップス｣を原作としたオムニバス映画。｢リトル・トリップ｣｢らくがき うわがき｣｢倍音｣の全3編で構成され、｢倍音｣は『勝手にふるえてろ』の大九監督×松岡茉優さんの初タッグ作品となっている。


[感想]

『私をくいとめて』公開にあわせて、過去に鑑賞していたが、記憶がなかったため、今回は原作(全4巻)を読破した上で鑑賞。

改めて観て、印象に残らない作品だったことを思い出した。笑

ポスターヴィジュアルで描かれているような、顔の映らない女子高生のイメージ映像が流れるオープニングは秀逸。

漫画のコマサイズから画面が映画サイズへと大きくなる演出に期待値は上がるのだが、総じて内容は薄味、数日後には忘れていそうなストーリーではあった。

とはいえ、第3編の｢倍音そうる｣に限っては異質かつ、強烈。

物語性は希薄で(というか、そもそも監督が物語ることを放棄している気がするが)、松岡茉優さんの魅力が存分に発揮されつつ、監督の独特な作家性が爆発しているので面白い。

監督もしくは松岡茉優ファンであれば、この短編だけでも観ておいて損はない映画だと思った。

また、ヤングエースで連載されていた原作では、青年向け漫画ならではの｢陰キャ男子が都合よく美少女に弄ばれる展開｣｢作劇上の必然性を感じないエロ要素｣が若干キツかったが、本作ではそこを省き、作品のトーンが大きく異なっている。

原作から女子高生の関係性を描いたエピソードを厳選し、女性監督×女性主人公という座組みで、青春ガールズムービーとして構成して直しているのが興味深く、企画自体の面白さを感じた。

また、余談ではあるが、類似タイトルのオムニバス映画『放課後たち』では全て男性監督がメガホンをとっており、本作と｢女性｣に対する描写が対称的であった。

気になった人は見比べてみても良いのかもしれない。


[各話感想]

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「リトル・トリップ」
☆×3.0

[出演]未来穂香(現:矢作穂香)、高嶋香帆
[監督]天野千尋(『ミセス・ノイズィ』)
[原作]｢放課後ロスト｣(｢ワールドゲイズ クリップス｣第1巻収録)

[あらすじ]

授業をサボる不真面目な女子高生・夕希と真面目な学級委員長・絢子。
"孤独"という共通点で結びついた二人は、ささやかな家出計画を実行する。
"秘密の小旅行"で距離が縮まる彼女たちだったが、楽しい時間にも終わりがやってきて……。

[感想]

シスターフッドからガールズラブに進みそうで進まない、絶妙な関係性が印象的な一作。

立場は違えど、孤独を抱えた女子高生二人が仲良くなっていく展開が尊かった。

原作ではどこか冷めきったテンション感だった二人が、本作では分かりやすく仲睦まじくしており、正反対な性格ながらも惹かれていく流れも小気味よい。

また、原作では自死を葛藤するクライマックスなど退廃的な空気感が強かったが、女子高生二人のやりとりを中心にポップな作風になっていたのも魅力的。

一方が恋愛感情を抱くというクライマックスのオリジナル要素も"別れの切なさ"を強調する上で上手く機能しており、"青春の儚さ"がより色濃くなっていたのが良かった。

劇中では文化祭前という舞台設定を活かし、合唱曲の歌詞として、何度か｢命短し～恋せよ乙女～♪｣というメロディか反復される。

この一節がまさしく本作の主題を表していたようにも思う。

チャーミングな表情の"矢作穂香"さんが、舐めたキャンディをバレないよう、嫌なクラスメイトに飛ばすシーンは、本作のハイライトだった。

参考
あいつらが頭のおかしいことを言っているぜ
https://youtu.be/uoTGkppm59k?si=xaNUjQzF9byF9Zy7
(劇中でストリートミュージシャンが演奏していた楽曲。本編でも本人たちが演奏している。ロックな曲名は、反体制な行動に出る主人公たちにピッタリである)

ゴンドラの唄
https://youtu.be/P7UTOtLU4L4?si=FiuYmj59rnewUO7M
(｢命短し～♪｣の曲。実は1915年に発表された楽曲で当時は松井須磨子さんが歌唱していたとのこと。リンクは並木路子さん版)

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「らくがき うわがき」
☆×2.5

[出演]佐藤すみれ(SKE48)、大石悠馬、中山絵梨奈
[監督]名倉愛
[原作]｢らくがき、うわがき｣｢橙色の時間とさようなら｣(｢ワールドゲイズ クリップス｣第2巻収録)

[あらすじ]

絵が描けなくなった女子高生・里未。
とあることがきっかけで文化祭の手伝いをする羽目になった彼女は、再び絵を描くことに向き合い始める。
一方、里未の良き相談相手で、高校を中退した元クラスメイト・古谷は、彼女に密かな恋心を抱えていた。
彼に思いを寄せる里未の友人・荻野は、そんな秘密を知り、ある行動に出る……。


[感想]

3編すべてに登場する"トンネルの落書き"についてが語られるエピソード。

原作で、絵描きを諦めた里未がリスタートする｢らくがき うわがき｣と、そのスピンオフ的後日譚で、彼女に恋心を抱く古谷を描く｢橙色の時間とさようなら｣を合わせた物語となっている。

しかし、その試みはお世辞にも成功とは言えず、尺の制約もあってか後半では唐突な展開(里未のビンタ、失恋した後の古谷と里未の会話シーンのBGMの合わなさ)が際立ってしまったのが残念だった。

小ネタ的に｢クウソウ｣(｢ワールドゲイズ クリップス｣第2巻収録)の"赤い風船にくくりつけられたお風呂のアヒル"も登場しており、原作へのリスペクトは感じられる1編だった。

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「倍音」
☆×3.5

[出演]松岡茉優、古泉葵
[監督]大九明子
[原作]｢プレイ フォー トゥデイ 前編｣｢……後編｣｢常温で灰になる日々の燃え残りに映る幻｣(｢ワールドゲイズ クリップス｣第2巻収録)


[あらすじ]

周りから優等生と一目置かれているリカ。
彼女は何かから解放されるように校舎内にイタズラ書きを繰り返す。
一方、他人とのキョリ感を誰よりも気にするユウは、日常の音を記録する一人遊びに明け暮れていた。
お互いが導かれるように出会った二人。
彼女たちは、廃校までに残された一週間を音づくりで埋めていく。
別れの日、ユウは録音した音声の並ぶスマホに、リカが隠したメッセージを発見し……。


[感想]

大九明子監督と松岡茉優さんの初タッグ作となった記念すべき短編。

原作では｢らくがき うわがき｣の里未が主人公だった｢プレイ フォー トゥデイ｣のエピソードが、おそらく原案となっている(第1巻の｢緑雨｣を彷彿とさせる"鳥を埋めるエピソード"も含まれている)が、登場人物や設定はかなり異なり、ほぼほぼ大九監督のオリジナル作品という印象が強い。

原作における"女子高生二人の録音あそび"という要素はそのままに、記録媒体をカセットテープからスマートフォンに変更。

ミュージカル映画のように、突如、MV的な演出が挟まる(｢倍音そうる｣の"ピーピーピピーピ ピピーピー"というメロディが頭から離れない)など、物語の設定を活かして、監督が好きなように演出で遊んでいるような印象を受けた。

冒頭からリカが学校の壁の至るところに筆で文字を書いたり、校内でキスをするカップルに頭上から唾を吐きかけたり、ユウはクラスメイトに腹パンをくらわしたり、大九監督の尖った作家性も健在(もちろん、これらのシーンは原作にはない)。

文化祭の最中、張り紙で塞がれた壁を突き破ったリカに対して、ユウが｢『シャイニング』？｣とツッコむシーンなど、映画好きならでは、な脚本のユーモアも面白かった。

原作の結びとなる｢燃え残りから昇る煙 そこに映る幻はぼんやりと眩しくてキレイ｣という一節。

それが見事に映像化されたラストシーンが素晴らしく、この場面だけでも本作を実写化した意義を感じられる作品だった。


参考

『Harmonics』(倍音そうる)MV『倍音epilogue』
https://youtu.be/NlC_DJa1ViY?si=_dP69HYbVHlq3ubw
(｢倍音そうる｣の産みの親による英語カバーverのMV。大九監督が手掛けており、本作の後日談的な要素も感じられる。)

倍音そうる | MS BLOG
https://ameblo.jp/sarutohebi/entry-11179300893.html
(監督と｢倍音そうる｣との出会い)

【本予告】映画『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』4月25日全国公開
https://youtu.be/jjtMa4wZHi4?si=E7BXUVTUKXJWEJCp
(監督は｢倍音そうる｣気に入り過ぎて、最新作の予告編の後半でもメロディを使っているが、その真相やいかに……。笑)

No.39 大九明子さん（映画監督）[第7章]【13歳のハローワーク公式サイト】
https://www.13hw.com/interview/39_07.html
(『放課後ロスト』絡みで、唯一インターネットの海に残されていたインタビュー記事。"倍音そうる"との出会いや"ラストシーン"を起点に着想したというエピソードも。)

tetsulikemoviesさんの感想・レビュー『ワールドゲイズ クリップス (1) (カドカワコミックス・エース)』
https://booklog.jp/users/tetsu0120/archives/1/4041204143
(原作マンガも感想を書いてみた。)

tetsulikemoviesさんの感想・レビュー『ワールドゲイズ クリップス (02) (角川Cエース)』
https://booklog.jp/users/tetsu0120/archives/1/4041207827
(こちらは2巻のほう。)


【Next Movie's HINT】
文化祭を控える女子高生
＞＞大九監督×松岡茉優

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