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野火のminorufukuのレビュー・感想・評価

野火(2014年製作の映画)
4.5
太平洋戦争末期のフィリピンが舞台。主人公の兵士は結核を患い野戦病院へと送られるが、怪我人でいっぱいの病院からは入院を断られ、仕方なく戻った自分の部隊からも復隊を拒絶され、食糧もないまま熱帯の戦地を彷徨い歩くという話。大岡昇平原作。

制作監督脚本編集主演 塚本晋也。出資が集まらず自主映画形態での制作となったらしい。ガッチャマンや進撃の巨人の実写化に莫大な予算投じるならその全額塚本監督に回せば良いのに、と思うくらいの凄まじい映画。

戦争を題材にしているがそこまで反戦テーマなわけではなく、極限状態に追い詰められた人間の姿を荒々しく描いている。色とりどりの花や河川など、熱帯の自然の風景は美しく取られているのに、そこで生きる兵士たちだけが黒く汚れていてボロボロになっている。ゆったりとしたテンポで行軍している場面からいきなり狙撃されて血や内臓を飛び散らして死んでいくシーンは壮絶の一言。
終盤、主人公と生き残ったかつての仲間との狂気をはらんだやりとりなどは緊迫感が半端ない。リリーフランキーも出ているが、真っ黒に汚れていて最初誰だか分からなかった。

この映画の前に撮られた市川崑監督版もみてみたいと思った。
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