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ゴジラ キング・オブ・モンスターズのbackpackerのレビュー・感想・評価

2.0
◾︎ゴジラシリーズ番外編
◾︎モンスターバース第3作
※【お断り】怪獣バトル映画としては4点、ドラマは1点、総合スコアとして2点

【作品情報】
公開日   :2019年5月31日
作品時間  :132分
監督    :マイケル・ドハティ
脚本    :マックス・ボレンスタイン、マイケル・ドハティ、ザック・シールズ
製作    :トーマス・タル、ジョン・ジャシュニ、メアリー・ペアレント、ブライアン・ロジャーズ、アレックス・ガルシア
製作総指揮 :バリー・H・ウォルドマン、ロイ・リー、ダン・リン、ザック・シールズ、松岡宏泰、大田圭二、坂野義光、奥平謙二
音楽    :ベアー・マクレアリー
出演    :カイル・チャンドラー、ヴェラ・ファーミガ、ミリー・ボビー・ブラウン、ブラッドリー・ウィットフォード、渡辺謙、サリー・ホーキンス、チャールズ・ダンス、トーマス・ミドルディッチ、ほか


【作品概要】
ゴジラ生誕65周年記念作品。
監督は『クランプス 魔物の儀式』で知られるマイケル・ドハティ。
瓦礫と土煙によって画面が泥臭くなりがちな怪獣映画が多い中、夜の闇を背景に、神々しく光り輝くシーンを多数盛り込み、迫力満点の作品に仕上げた。

一方、前作(『GODZILLA』)の続編として、壊滅的にお粗末な人間ドラマという要素まで踏襲……むしろ強化改良されている点は、公開直後から批判され、高評価低評価の要素が完全に併存している、気の毒な映画でもある。


【作品感想】
モンスターバース第1作『GODZILLA ゴジラ』は、ゴジラに込められた日本の歴史・文化・民族等の背景を取り払い、キャラクターアイコンとしての〈ゴジラ〉を描くことに集中。「巨大な怪獣が暴れ回り戦い合う様」を見せる映画に特化した作品でした。
これを文化の盗用と見るか、新たな船出と見るか、意見は割れるところかと思います。

正直なところ、個人的には前者も後者も同意する点があると言えます。
"核"への考え方という本質的要素が失われたゴジラを見ることが悲しいと同時に、ゴジラシリーズに新しい風が吹き込んできたことに対する喜びもあり、如何ともし難いのです。

そのため、本作が公開された当時は、劇場鑑賞を見送ることにしました。
気が進まなかった、『GODZILLA』である意味満足していた、色々な理由があります。
ただ、「レンタル開始したら見るだろう」なんて思っていたら、地上波初放送まで機会を逸してしまうとは、思っておりませんでした。


結局、本作も、上述のような点含めて、思うところが多々あります。
しかし、まずは最大かつ最悪な点に対する疑問を一つ。
「この脚本、正気か?」
ということです。

最高に素晴らしい怪獣達の描写とは打って変わり、お粗末を通り越して地獄絵図となった人間ドラマは、鑑賞が苦痛に感じる程の悲惨さ。
脚本家や製作の人数を見た時点で「あっ」と察してしまうところではありますが、まさに船頭多くして船山に登る状況。
まったくまとまりがなく、やっつけ感が強いため、怪獣パートとの落差に眩暈がしそうです。
(人間ドラマパートが好きな方はごめんなさい。)

特に、本作の悪を一身に背負った狂気の科学者エマ・ラッセル博士は、その行動原理の根底にある「残された者の悲しみ」に対する共感余地を著しく欠いており、極めて気の毒な役回りでした。
そもそも、私はあまり人物に感情移入や共感をするタイプではありませんので、「共感した!」「感動した!」という皆様におかれましては、大変恐縮です。
(エマ含むラッセル家族の珍道中パートは、見たくもない宣伝・広告のごとく無になりました。)

息子をゴジラ&ムートーの戦闘によるサンフランシスコ壊滅災害にて喪ったエマ博士が、ゴジラ単体への報復ではなく、
「環境を破壊する人類は地球の病原菌。地球の破滅を回避す?為には、巨大生物が支配した時代に戻し、自然界の秩序を取り戻す必要がある。その結果人類は大半が死ぬが、当然の犠牲だ」
という考え方に至る理由は、完全に謎のまま放置されます。

一体なぜこの人は、極左エコロジーテロリスト的主張になったのでしょうか?
人命軽視甚だしく、人を個の生命ではなく、無機物の集合体かのように捉えている彼女は、我が子を持つ"母親"の行動様式としては、かつてない程おぞましい"母親像"です。
ネグレクト系映画でもなければ決して登場しない、ましてや聖母マリア信仰の強いキリスト教世界においては極めて異端な、強烈な母親ですね。


あと、芹沢博士の「さらば友よ」発言にも、一つ物申させてください。
私は、『GODZILLA』レビューでも記しましたが、芹沢猪四郎博士というネーミングの違和感を持っています。
また、彼の"失われし神々への信仰"に対しての説明が特にないことも不満です。
「この男は、何故ゴジラをここまで愛し、追い求め、傾倒し、命を捨てる事ができるのか」という、まさしく彼の信仰心が鮮明にならない限り、どれだけ彼の感動と喜びの深さを映し出そうとしても、薄っぺらなだけだと思います。

芹沢博士繋がり?でついでに言いますが、オキシジェン・デストロイヤーの扱いの雑さにも驚きました。
何これ?名前が出るだけ?
どんな兵器かの説明はなし?
「核より強い超兵器」みたいな適当っぷりで、ゴジラに大ダメージ与えてるけど、それでいいのか?
『ゴジラ』(1954年)において、芹沢博士がどんな思いを抱えて作り出し、死んでいったか、わかってるんでしょう?それならこんな扱い、酷すぎませんか??


ということで、怪獣パートの素晴らしさと、それに比べて残念過ぎる人間ドラマパート及び細々した「ゴジラ馬鹿にしてんのか?」要素が我慢ならず、大変アンビバレントな感想を持たざるを得ない作品でした。
そういうことが気にならない方や、怪獣バトル以外はどうでもいい方には、申し分ないほどオススメできる作品です。
気になってしまう方でも、大迫力な娯楽大作ですので、なんやかんな楽しく見ていただけると思います。
モンスターバース版GODZILLAが初ゴジラだった人も、『昭和ゴジラ世代』・『平成ゴジラ世代』・『シン・ゴジラ』等近年のゴジラ世代の人も、もちろんゴジラ経験なしの人も、是非ご鑑賞ください。



最後に、地上波鑑賞にて驚愕したことを一つ書き残します。

「吹き替えが下手すぎる!」
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