ゆーあ

ゴジラ キング・オブ・モンスターズのゆーあのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

景気が良い!

ゴジラ、キングギドラ、モスラ、ラドン…大御所怪獣たちが一堂に会してやることといえば、大破壊!前作はハワイやサンフランシスコなどアメリカ国土が中心だったので、日本がスタート地点といえど対岸の火事をスクリーンで眺めている感じがありましたが、今回は世界全土をターゲットに、ド景気よくぶっ壊されます。というか「怪獣に地球をメチャクチャにされたぁい💛」という監督の抑えきれないマニア的欲求をビシバシ感じる作品です。
それにしても前作はムートーという無名の新人相手だったのに、モンスターユニバースとしては2作目のゴジラ作品でもう怪獣大戦争をやるとは…スーパーマンを撮ったらもうジャスティスリーグかっていうね。ただDCEUが性急さによるものの一方でこちらは「我慢できなかった」んだろうなというのがダダ洩れで分かる。でもKOMも「怪獣映画を撮っているのではない。神話を撮っているのだ」という感がものすごく強いので、その辺の宗教観は共通してますね。

さてストーリーですが、モナークの女性研究員エマが、怪獣の周波数を分析し意思疎通を可能にするメカ(オルカ)を開発したところから始まります。この「詳しい説明は省くがここにすごいメカがあります」という出だし、ディザスターの予兆としては100点ですね!このオルカをもってエマが交信を試みた相手がモスラの幼虫。交信は成功し興奮するモスラを鎮静化させたその瞬間、研究所がテロリストに襲われ、オルカごとエマと娘のマディソンが拉致されてしまいます。しかしそれは全てエマが仕組んだ狂言で、彼女の目的はテロリストの力を借り、オルカを使って世界中に眠る怪獣を目覚めさせ、文明を破壊し地球をやり直すことでした。最近紫色のおっさんもそんなことしようとしてたけど、みんなまとめてリセットさんに怒られろ。しかしここはどうぶつの森ではないので、代わりに世界に均衡をもたらす存在こそ、ぼくらがゴジラ番長。これが怪獣大戦争に至るざっくりした経緯です。

前作は軍人の主人公とその家族に焦点をあてたヒューマンラブストーリーが軸だったので、怪獣という巨大な力に蹂躙されながらも抗う人類の強さが色濃く描かれていましたが、今作は監督からして抗う気がゼロなので、怪獣の怖さがより強く表現されているように感じました。モナークの基地周辺を通り過ぎるゴジラのソナー反応、南極で目覚めたギドラののど首をせり上がる引力光線…圧倒的な力に街が破壊される直接的描写よりも、1秒後にそれが来るという絶望の演出に何度も鳥肌が立ちました。ラドンも、造形が他と比べてシンプルなのでやや地味ですが、マッハで上空を駆け抜けた後の街が衝撃波でなぎ倒されていく様が怖かったです。

そんな単体でも畏怖すべき怪獣たちがぶつかったら、そりゃあもうダイナミックで面白すぎるにきまってる!特にファンウェイパークの最終決戦はクライマックスにふさわしいハイカロリーな見ごたえ。拮抗しあうゴジラとギドラ、そこにラドンが乱入!ゴジラをタコ殴りだーーーこれはさすがのゴジラも立てない!と、ここで往来の戦友、モスラが加勢に来た!!ラドンを引き付ける!ゴジラVSギドラ、モスラVSラドンの構図だーー!…完全にプロレスのタッグマッチ展開で、手に汗握って燃えました。この後終盤で1歩ごとにあらゆるものをドロドロに溶かしながら爆風をまとって進撃するゴジラも、最高に怖くて格好良くてゾクゾクしました!
この怪獣大戦争の様子がまた、どこを切り取っても絵になるんですよね。予告でも流れたギドラにゴジラが走り寄って取っ組み合う瞬間のカットは、バロック絵画のごとき壮大なカタルシスが渦巻く終末の美そのものです。バトルシーン以外でも、芹沢博士が古代神殿の階段を上る姿を引きで撮影したシーンは、ゴルゴダの丘を上るキリストを想起させました。人類の罪を背負い、自らの命を賭して神=ゴジラのもとに向かう彼の全身は歓喜に満ちており、その死は殉職ではなく、まさしく殉教だったと思います。オキシジェン・デストロイヤーや芹沢博士の死など、初代へのオマージュが随所に見られますが、それに多分に宗教的な味付けをしているのが今作の特徴であり、監督のシリーズに対する信仰心のあらわれだと感じました。高濃度放射能に満ちた空間でヘルメットと手袋を外し、素肌でゴジラに触れる芹沢博士。そんな彼を、重い瞼を開いてじっと見つめるゴジラは、何を思っているのか…。このシーン、一言でいうとトトロ。序盤でモスラと穏やかに見つめあうマディソンのことをいわゆる小美人的なポジションかと思ったのですが、そのポジションはどちらかというと芹沢博士でしたね。

個人的に、大災害を通して家族の絆を描くディザスター映画よりも、メチャクチャなスケールの大破壊とそれに対応するプロフェッショナルチームを描く内容の方が好きなので、今作で人類サイドの焦点がモナークに当たったのが嬉しかったです。しかしモナークは怪獣オタクの集まりなので、とにかく現場でプロレス観戦をしたいというのが第一だし、軍の作戦はガッバガバ。環境に多大な影響を与えるオキシジェン・デストロイヤーを敵の正体も見極めないまま使うとか…!『シン・ゴジラ』の人たちってものすごく賢かったんだね。まああれは違う方向のオタクが作った映画なので、今作はこれで正しいのです。全ては「ゴジラ番長、やっちゃってください!」に持っていくための展開。ゴジラが空軍機を率いるようにギドラに突撃する構図は象徴的で、その安心感と高揚感たるやたまりませんでした。

ギドラは絶対的な悪役として描かれていましたが、愛嬌も垣間見えて魅力的でした。特に南極の氷をペロペロする右の首を、真ん中が「バッカお前何してんだ!」て感じでバシってするとこ。バカな末っ子なのwwwまたモスラは女の子なんですね。孵化やゴジラの加勢に現れた時の姿がキラキラしてとても美しかったです。畏怖の中に適度な脱力ポイントや美しさを漏らさず挿入してくるところにも、監督の怪獣愛の深さを感じました。

作り手の「好き!」「やりたい!」がダイレクトアタックで伝わってくる作品は、本当に面白いです!有名怪獣全部乗せで、燃えたぎる熱量に任せて大スケールで走り抜ける『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』は、ユニバース最新作にして一番楽しめました!
ゆーあ

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